
| 名称 | 草薙の剣(天叢雲剣) |
|---|---|
| 神話体系 | 日本神話(記紀神話) |
| 所有者 | スサノオ → ヤマトタケル → 歴代天皇 |
| 製作者 | ヤマタノオロチ |
| 形状 | 「直剣(ちょっけん)」と呼ばれる、真っ直ぐで長い「両刃の剣」 神秘的な形状で、全体が白っぽく輝いている |
| 主な能力 | 風を操る(伝承) 超硬度 |
草薙の剣(天叢雲剣)は日本神話に出てくる神器(武器)です。
まい日本神話における「最強の剣」といえば、間違いなく「草薙の剣(天叢雲剣)」でしょう
三種の神器のひとつであり、皇室の権威の象徴でもある天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)、またの名を草薙の剣(くさなぎのつるぎ)。
草薙の剣(天叢雲剣)は、荒ぶる神スサノオが八岐大蛇(ヤマタノオロチ)の尾から手に入れ、英雄ヤマトタケルが絶体絶命の危機を切り開いた神剣です。
「雲」から生まれ「草」を薙ぎ払った、日本で最も有名な伝説の武器「草薙の剣(天叢雲剣)」について解説します。
草薙の剣(天叢雲剣)誕生秘話


YamataNoOrochi.(1870年)
草薙の剣(天叢雲剣)には2つの名前がありますが、最初に付けられた名前は「天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)」です。
- 天叢雲剣
生まれた時の名前
「神話的・神秘的」な響きがあり、ゲームなどでは「魔剣」として扱われることも。 - 草薙の剣
ヤマトタケル以降の名前
「英雄の剣」「皇室の剣」としての側面が強く、歴史の教科書などではこちらが一般的



草薙の剣(天叢雲剣)はスサノオがヤマタノオロチの尾から手に入れました
詳しくは「八岐大蛇退治と「天叢雲剣」の誕生」を参照ください
その後、天叢雲剣は天孫降臨(てんそんこうりん)の際に地上へ戻され、伊勢神宮を経て、英雄ヤマトタケル(日本武尊)の手に渡ります。
そして、天叢雲剣はヤマトタケルの冒険の中で「草薙の剣」へ改名しました。
草薙の剣(天叢雲剣)は現在「熱田神宮」に祀られている
草薙の剣(天叢雲剣)は現在、熱田神宮(あつたじんぐう)に祀られています。



海外の伝説の聖剣として有名なエクスカリバーは「湖に帰った(行方不明)」とされますが、草薙の剣(天叢雲剣)は現存すると言われるのが大きな特徴です
愛知県名古屋市にある熱田神宮は、この草薙の剣(天叢雲剣)を御神体(神様そのもの)として祀るために建てられた神社です。
一般公開はされていませんが、今も本殿の奥深くに鎮座していると信じられています。
壇ノ浦で沈んだ草薙の剣(天叢雲剣)は本物?


Dan-no-ura o-kassen do zu (BM 2008,3037.20513)(19世紀)
平家物語において、安徳天皇と共に海に沈んだ「三種の神器」の中には草薙の剣もありました。
では、今の熱田神宮にあるのは偽物なのでしょうか?
一般的な解釈では、以下のように考えられています。
- 熱田神宮にある剣
「真の神剣(本体)」で、ヤマトタケルが置いていったもの - 宮中(天皇の側)にあった剣
「形代(かたしろ=分身)」であり、崇神天皇の時代に作られたレプリカ
つまり「海に沈んで失われたのは形代(レプリカ)であり、本物は今も熱田神宮にある」とされています。



ただし、形代であっても神の力が宿る聖なる剣であることに変わりはありません
草薙の剣(天叢雲剣)の能力


日本神話において、草薙の剣(天叢雲剣)の能力は大きく2つに描かれています。
- 絶対的な硬度
- 風と雲の支配
草薙の剣(天叢雲剣)は誕生のエピソードにある通り、スサノオが持っていた神剣(十拳剣)の刃を欠けさせるほどの硬さと鋭さを持っています。
「鉄をも断つ鉄」としての描写は、当時の製鉄技術の優劣(オロチ=砂鉄の産地という説)を象徴しているとも言われます。
また「天叢雲」の名が示す通りの雨雲を呼ぶ力や、ヤマトタケルの神話のように「風を操る力(風属性)」を持つと解釈されることが多いです。
草薙の剣(天叢雲剣)は実は意外と長かった?
ゲームなどでは短剣として描かれることもありますが、神話や数少ない目撃証言に基づくと、草薙の剣は「約80cmを超える長剣」であった可能性が高いです。



草薙の剣は「御神体」として絶対の秘匿とされているため、誰もその姿を見たことはありません
しかし江戸時代に一度だけ、熱田神宮の神官がこっそりと盗み見たという記録(『松岡正直筆記』)が残っており、それが現在の最も有力な外観イメージとなっています
平安時代以降の「反りのある日本刀」とは異なり、古代の「直剣(ちょっけん)」のスタイルをしており、刃は両刃(諸刃)。
その形状は「菖蒲(ショウブ)の葉」に似ており、刀身の真ん中には背骨のような厚みがあったと伝えられています。
神代の剣でありながら錆びついている様子はなく、全体が白っぽく輝いていたとも。
「鉄」というよりは、未知のヒヒイロカネのような神聖な金属を思わせる質感と考えられます。
英雄ヤマトタケルが炎に囲まれた際、この剣で草を薙ぎ払うことができたのも、この剣が十分な長さと、風を巻き起こすほどの質量を持った「豪壮な剣」だったからでしょう。
草薙の剣(天叢雲剣)は見てはいけない
草薙の剣(天叢雲剣)は天皇陛下ですら、直接見てはいけないと言われています。
見てはいけない理由
- 天皇の位の証で神聖な存在である
- 過去に見たものが亡くなった祟りの伝説がある
- 即位の儀式でも形代というレプリカを使う
18世紀ごろに草薙の剣(天叢雲剣)をこっそり見た熱田神宮の神官たちも祟りや病気で亡くなった、と言われています。



伝説でも、壇ノ浦の戦いで神器を見た武士には「眩暈」「鼻血」が止まらないという天罰があったと語られています
草薙の剣(天叢雲剣)の所有者はスサノオ・ヤマトタケル・歴代天皇


Yamato-Takeru-with-Sword-Kusanagi-no-Tsurugi-by-Ogata-Gekko.(1887年)
草薙の剣(天叢雲剣)は一人の英雄が持ち続けた西洋の剣とは異なり、神々から人へ、そして神社へとリレーのように受け継がれていきました。
主な所有者は以下の5名です。
- スサノオ(素戔嗚尊)
天羽々斬(アメノハバキリ)で八岐大蛇を退治し、その尾の中からこの剣を発見した最初の持ち主 - アマテラス(天照大御神)
スサノオから献上され、高天原の宝として管理した最高神 - ヤマトヒメ(倭姫命)
伊勢神宮の祭主で、甥であるヤマトタケルの身を案じて草薙の剣(天叢雲剣)を授けた - ヤマトタケル(日本武尊)
草薙の剣(天叢雲剣)を振るって数々の危機を乗り越えた、古代日本最強の英雄 - ミヤズヒメ(宮簀媛)
ヤマトタケルの妻で、夫亡き後は草薙の剣(天叢雲剣)を祀って「熱田神宮」を創建した



草薙の剣(天叢雲剣)は現代に至るまで、正当な皇位の証として歴代天皇に継承されています
草薙の剣(天叢雲剣)にまつわる神話


草薙の剣(天叢雲剣)にまつわる神話をまとめました。
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八岐大蛇退治と「天叢雲剣」の誕生


Susanoo-no-Mikoto-slays-Yamata-no-Orochi-in-Izumo-By-Tsukioka-Yoshitoshi.(1887年)
草薙の剣(天叢雲剣)が世に現れたのは、神代の出雲の国でのことです。
高天原を追放された荒ぶる神スサノオは、美しい娘クシナダヒメを救うため、8つの頭と8つの尾を持つ巨大な怪物、八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を退治することになりました。
スサノオは強い酒を用意してオロチを酔いつぶれさせ、眠った隙に腰に差していた「天羽々斬(アメノハバキリ)」を抜き、オロチを切り刻んでいきました。
しかし、大蛇の「尾」を切りつけた瞬間、カキン!という高い音がして、天羽々斬(アメノハバキリ)の切先が欠けてしまったのです。
不審に思ったスサノオが尾の中を裂いて確かめると、そこから一振りの見事な太刀が現れました。
オロチの頭上には常に「叢雲(むらくも=群がり立つ雲)」がかかっていたことから、この剣は「天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)」と名付けられました。
スサノオは「これは自分ごときが持つには惜しい、霊妙な剣だ」として、高天原の姉神アマテラスへと献上しました。
ヤマトタケルの冒険の中で「草薙の剣」へ改名


Yamamoto Takeru no mikoto between burning grass.
時代は下り、天叢雲剣は伊勢神宮を経て、英雄ヤマトタケル(日本武尊)の手に渡ります。
東方遠征の途中、ヤマトタケルは相模国(現在の静岡県焼津市あたり)で敵の豪族に騙され、広大な野原におびき出されました。
敵は四方から火を放ち、ヤマトタケルを焼き殺そうとしました。
燃え盛る炎が迫る絶体絶命の危機、ヤマトタケルは天叢雲剣を抜き放って一閃すると、周囲の背の高い枯れ草が根元からなぎ払われました。
さらに、叔母のヤマトヒメから授かっていた「火打石」を使って向かい火(火を迎撃する炎)を放つと、剣の霊力か風向きが変わり、炎は敵の方へと逆流していきました。



後世の解釈では、剣が「風」を操って炎の向きを変えたとも語られます
この奇跡的な勝利により、天叢雲剣は「草を薙ぎ払った剣」すなわち「草薙の剣(くさなぎのつるぎ)」という新たな名で呼ばれるようになり、以後こちらの名前が定着しました。
英雄の死と熱田神宮の起源


Mount Ibuki top 2011-03-06.(2011年)
無敵の強さを誇ったヤマトタケルですが、その最期はあっけないものでした。
遠征の帰り道、ヤマトタケルは尾張の国で妻のミヤズヒメと過ごしますが、すぐに伊吹山の荒ぶる神を討伐に出かけました。



荒ぶる神は白猪や大蛇の化身とも言われています
この時、ヤマトタケルは慢心からか「あんな山の神ごとき、剣を使わずとも素手で殺してくれる」と言い放ち、守り神である草薙の剣を妻の元に置いたまま出陣してしまったのです。
最強の剣を持たぬ英雄は、山の神が降らせた大氷雨(毒気を含んだ霧とも)に打たれて病にかかり、そのまま帰らぬ人となってしまいました。
残された妻ミヤズヒメは、夫の形見であり神剣である草薙の剣を祀るために社(やしろ)を建てました。
これが現在の愛知県名古屋市にある熱田神宮の起源であり、草薙の剣は今もその御神体として、本殿の奥深くに静かに鎮座しています。
草薙の剣(天叢雲剣)が現代作品に与える影響


草薙の剣(天叢雲剣)は日本最強の剣だけあって、登場作品数は数え切れません。
- 『ONE PIECE』
海軍大将・黄猿(ボルサリーノ)が使う光の剣「天叢雲剣」 - 『NARUTO -ナルト-』
大蛇丸やサスケが使う剣「草薙の剣」
オロチ(大蛇丸)との関連もしっかり踏襲されています - 『ポケットモンスター』
伝説のポケモン・ザシアンなどは、この剣のイメージが投影されていると言われている - 『ファイナルファンタジー』
オーディンのアビリティ「天の叢雲」として登場 - 『グランブルーファンタジー』
英雄武器「天叢雲剣・再誕」がある - 『遊戯王』
カード名「天叢雲之巳剣(あめのむらくものみつるぎ)」があり、特殊召喚時に相手モンスターを全て破壊する効果を持つ



草薙の剣(天叢雲剣)は古代から現存するの伝説の剣であり、多くの現代作品で愛される神器のひとつです








