
| 名称 | 天羽々斬(アメノハバキリ) 十拳剣(とつかのつるぎ) 布都斯魂剣(ふつしみたまのつるぎ) 蛇之麁正(おろちのあらまさ) |
|---|---|
| 神話体系 | 日本神話(記紀神話) |
| 所有者 | スサノオ(素戔嗚尊) |
| 製作者 | 不明(高天原由来の神の剣) |
| 形状 | 束が拳10個分もある巨大な直刀 |
| 主な能力 | 大蛇殺し、魔を払う霊力 |
天羽々斬(アメノハバキリ)は日本神話に出てくるスサノオの武器です。
まい天羽々斬(アメノハバキリ)は、日本神話において最強の怪物「八岐大蛇(ヤマタノオロチ)」を実際に倒した神剣です
オロチの体内から出てきた「草薙の剣」があまりに有名ですが、オロチの首を物理的に切り落としたのはスサノオノミコトが振るった天羽々斬(アメノハバキリ)でした。
「天の(聖なる)、羽々(大蛇)を、斬る剣」
その名の通り、巨大な怪物を葬り去った伝説の武器について解説します。
天羽々斬(アメノハバキリ)誕生秘話


Amaterasu cave edit2.(1857年)
天羽々斬(アメノハバキリ)は、もともとは「十拳剣(とつかのつるぎ)」と呼ばれる剣の中の一本でした。
スサノオが高天原から地上(出雲)へ降りた際に帯刀していたもので、製作者は不明ですが、地上の人間が作ったものではなく高天原由来の「神の剣」です。
この剣が「天羽々斬(アメノハバキリ)」という固有の名前で呼ばれるようになったのは、ヤマタノオロチ退治の功績によるものです。



古代の日本語において「ハハ(カカ)」とは「蛇」を意味する言葉であり、「天の、大蛇を斬った剣」が名前の由来です
また別名「蛇之麁正(おろちのあらまさ)」とも呼ばれ、「オロチを倒した、荒々しくも優れた真の剣」を意味します。
「十拳剣」は1本ではない


天羽々斬(アメノハバキリ)は神話でよく「十拳剣(とつかのつるぎ)」と呼ばれますが、 実は「十拳剣」とは特定の1本の名前ではなく、サイズの名称(一般名詞)です。
「十拳剣」とは、「拳(こぶし)10個分の長さがある剣」という意味で、当時の「長剣」全般を指す言葉です。



そのため、日本神話には「別の十拳剣」がいくつか登場します
スサノオの父であるイザナギの剣も十拳剣でした
よく混同される以下の剣は、すべて「種類は同じ(十拳剣)だが、別の剣」と考えられます。
| 所有者 | 使われた場面 | 剣の名前(真名) |
|---|---|---|
| イザナギ | カグツチ(火の神)を斬った | 天之尾羽張(アメノオハバリ) |
| スサノオ | アマテラスと誓約した (噛み砕かれて消滅) | (名称不明の十拳剣) |
| スサノオ | ヤマタノオロチを斬った | 天羽々斬(アメノハバキリ) |
神話に初めて登場するスサノオの十拳剣は、天羽々斬(アメノハバキリ)とは別物と考えられます。



最初に持っていた十拳剣は誓約(うけい)をした際に、アマテラスに噛み砕かれて宗像三女神が生まれました
そのため、後に地上でヤマタノオロチを倒した「天羽々斬(十拳剣)」は、スサノオが新たに装備し直した別の剣の可能性が高いのです。
天羽々斬(アメノハバキリ)の能力


天羽々斬(アメノハバキリ)には神話級の怪物を屠る物理的な攻撃力と、神剣としての霊力が備わっています。
スサノオは酒に酔って眠りこけたヤマタノオロチに近づき、天羽々斬(アメノハバキリ)を抜いて切りかかりました。
その切れ味は凄まじく、大木のように太いオロチの8つの首を次々と切断し、あたりの川(肥の河)は流れる血で真っ赤に染まったと伝えられています。
天羽々斬(アメノハバキリ)よりも硬い草薙の剣(天叢雲剣)


硬度では天羽々斬(アメノハバキリ)よりも草薙の剣(天叢雲剣)の方が上でした。
ヤマタノオロチ退治の最後のとどめとしてオロチの「尾」を切りつけた瞬間、カキン!と音がして天羽々斬(アメノハバキリ)の刃が欠けてしまいました。
尾の中に隠されていたのが、後に三種の神器となる至高の神剣「草薙の剣(天叢雲剣)」だったからです。
とはいえ実際に怪物を倒してクシナダヒメを救ったのは、間違いなくこの天羽々斬(アメノハバキリ)の功績です。
天羽々斬(アメノハバキリ)は古代では異例のビッグサイズ
「十拳剣」という名称が示す通り、天羽々斬(アメノハバキリ)は「拳10個分の長さ(束の長さ、あるいは刃渡り)」を持つ非常に長い剣です。



神話の考察や目撃談から、草薙の剣(天叢雲剣)が80cm程度であるのに対し、天羽々斬(アメノハバキリ)は全長120cmほどとかなり長かったようです
古代の剣としては異例のサイズであり、現代で言うところの「大太刀(おおだち)」のような豪壮な形状をしていたと考えられます。
天羽々斬(アメノハバキリ)は現在「石上神宮」に祀られている


Isonokami-jingu, haiden-1.
天羽々斬(アメノハバキリ)は、現在は日本最古の神社の一つである「石上神宮(いそのかみじんぐう)」に祀られています。



草薙の剣(天叢雲剣)が熱田神宮にあるように、天羽々斬もまた、現存していると言われています
石上神宮では天羽々斬(アメノハバキリ)に宿る神霊を「布都斯魂大神(ふつしみたまのおおかみ)」という神名で呼んでいます。
明治時代に当時の宮司が禁足地(立ち入り禁止エリア)を発掘した際、神話の記述通りの全長120cm位の片刃の刀が出土しました。
これが天羽々斬(アメノハバキリ)そのものか、あるいはその依代(よりしろ)として祀られていたものと考えられ、厳重に保管されています。



実は一緒に発掘された布都御魂(フツノミタマ)も本殿に祀られています
天羽々斬(アメノハバキリ)の所有者はスサノオ


Susanoo no Mikoto, from an unidentified series.(20世紀)
天羽々斬(アメノハバキリ)の所有者は、三貴神の一柱であるスサノオ(素戔嗚尊)です。
スサノオはイザナギから生まれた神であり、アマテラスの弟にあたります。
非常に力が強く荒っぽい性格で、高天原(アマテラスの国)で乱暴を働いて追放されてしまいましたが、地上(出雲)へ降りてからは英雄としての側面を発揮しました。
クシナダヒメという少女がヤマタノオロチの生贄にされそうになっているのを知り、天羽々斬(アメノハバキリ)を振るって怪物退治を成し遂げました。
その後、スサノオは出雲の国を治める偉大な祖神となり、天羽々斬(アメノハバキリ)も子孫や神社へと受け継がれていきました。
天羽々斬(アメノハバキリ)にまつわる神話


Susanoo-no-Mikoto-slays-Yamata-no-Orochi-in-Izumo-By-Tsukioka-Yoshitoshi.(1887年)
天羽々斬(アメノハバキリ)にまつわる神話といえば、「ヤマタノオロチ退治」です。
高天原を追放されたスサノオは、出雲の国で泣いている老夫婦と美しい娘(クシナダヒメ)に出会います。


Susanoo rescues Kushinada Hime by Toyohara Chikanobu 1886.(1886年)
泣いている理由を聞くと、「8つの頭と8つの尾を持つ巨大な怪物、ヤマタノオロチが毎年やってきて娘を喰らってしまう。これまでに7人の娘が喰われ、ついに末娘の番が来てしまった。今年ももうすぐその時期だ」とのことでした。
スサノオはクシナダヒメとの結婚を条件に、オロチ退治を引き受けます。
まずスサノオは強い酒を8つの桶に用意させ、オロチがやってきて酒を飲んで酔っ払って寝てしまうのを待ちました。


Japanese fairy tale series. no.9. YAMATA NO OROCHI.10.(1886年)
オロチがいびきをかいて眠り始めると、スサノオは十拳剣(天羽々斬)を抜き放ち、巨体をズタズタに切り裂いて見事にオロチを退治しました。
この時、オロチの尾の中から「草薙の剣(天叢雲剣)」が見つかったことで誤解されますが、実際にオロチの命を奪ったのは天羽々斬(アメノハバキリ)の刃でした。
この功績により、ただの十拳剣だったこの剣は「天羽々斬(大蛇斬りの剣)」という名誉ある名前で呼ばれるようになったのです。
天羽々斬(アメノハバキリ)が現代作品に与える影響


天羽々斬(アメノハバキリ)は「怪物を斬る剣」としてのイメージから、バトル作品での登場頻度が高いです。
- 『ONE PIECE』
ワノ国の侍・光月おでんが愛用した大刀「天羽々斬」
「天をも切り落とす」とされ、カイドウ(龍=大蛇)に傷をつけた唯一の武器として描かれた - 『グランブルーファンタジー』
水/光/火属性など複数バリエーションを持つ
連続攻撃率UP、ダメージ上限UPなどの強力スキルを持ち、高難易度コンテンツ定番 - 『天華百剣』
刀剣を美少女化して「天羽々斬」として登場
CVは能登麻美子 - 『戦姫絶唱シンフォギア』
主人公の一人、風鳴翼が使うアームドギア(聖遺物)として登場
青い炎を纏った刀として描かれ、絶大な人気を誇る - 『ペルソナ4』
ジライヤ(スサノオ)に関連する強力な武器として登場



天羽々斬(アメノハバキリ)は、現代作品でも最高ランクの武器として多くの作品で愛されています








