
| 名称 | トリシューラ |
|---|---|
| 神話体系 | インド神話(ヒンドゥー教) |
| 所有者 | 破壊神シヴァ |
| 製作者 | 工匠神ヴィシュヴァカルマン |
| 形状 | 3つの穂先を持つ槍 |
| 主な能力 | 三界(天・地・空)の支配と破壊 絶対的な権威(シヴァの主権・宇宙秩序への裁定権を象徴) |
トリシューラはインド神話に出てくる破壊神シヴァの武器です。
まいサンスクリット語で「トリ」は「3」、「シューラ」は「槍・痛みを伴うもの」を意味します
ギリシャ神話のポセイドンが持つ「トライデント」と形状は似ていますが、トリシューラは単なる武器ではなく、シヴァ神の「破壊・創造・維持」の3つの権能を象徴する法具です。
物理的な破壊力だけでなく、宇宙秩序そのものに干渉し、破壊と再生を司る力を象徴するとされる神の絶対的な力を宿した究極の槍です。
以下でインド神話の最高神の一柱、破壊神シヴァの伝説の宝具について詳しく解説していきます。
トリシューラ誕生秘話


Surya Narayana.
トリシューラの誕生には、スダルシャナ・チャクラ・プシュパカ・ヴィマナと同じく「太陽」が深く関わっています。
太陽神スーリヤの光と熱があまりに強すぎたため、工匠神ヴィシュヴァカルマンがスーリヤの体を削って熱を減らしました。


Vishwakarmaji.(2006年)
この時に出た「太陽の削りカス(エネルギーの塊)」を使って作られたのが、以下の3つの神具です。
- スダルシャナ・チャクラ(ヴィシュヌの円盤)
- トリシューラ(シヴァの三叉槍)
- プシュパカ・ヴィマナ(空飛ぶ宮殿)



つまり、トリシューラとスダルシャナ・チャクラは「同じ素材から生まれた兄弟武器」なのです
シヴァ神にとってトリシューラは体の一部のような存在であり、寝る時も瞑想する時も、常に片時も離さず持ち歩いています。
トリシューラの能力


トリシューラの3本の穂先は単に刺すためのものではなく、宇宙のあらゆる「3つの理(ことわり)」の支配を象徴しています。
- 三機能の支配(トリムルティ)
「創造(ブラフマー)」、「維持(ヴィシュヌ)」、「破壊(シヴァ)」の全ての力がこの槍に集約されている - 三つの時間(カール)
「過去」、「現在」、「未来」の全てを見通し、支配する力を表す - 三つの性質(グナ)
物質界を構成する「純質(サットヴァ)」、「激質(ラジャス)」、「暗質(タマス)」のバランスを保つ
攻撃能力としては、投げれば決して外れることなく敵を貫き、刺した相手を物理的に破壊するだけでなく、その存在や迷い(無知)さえも断ち切るとされています。
トリシューラの形状は長く鋭い3本の穂先を持つ槍で、柄の長さは自在で時には杖のように短く、時には天を突くほど長く描かれます。
また、槍の柄には「ダマル」と呼ばれる小さな太鼓が結び付けられることが多いです。



シヴァ神が踊るときにはダマルのリズムに合わせて宇宙の生成と終焉が繰り返されると言われています


Shiva as the Lord of Dance LACMA edit.(949年)
インド神話の三大神の力は格付けするとは何位にランクインするのでしょうか?
気になる順位はインド神話の最強武器ランキングの記事で発表していますので、合わせてチェックしてみてくださいね。
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トリシューラの所有者はシヴァ


Bearded Shiva.(1940年)
トリシューラの主な所有者は破壊神シヴァです。
シヴァの武器
破壊と再生を司る最高神シヴァは 虎の皮をまとい、体中に灰を塗った苦行者の姿で描かれ、右手には必ずこのトリシューラを握っています。
シヴァにとってトリシューラは武器であると同時に、修行僧が持つ杖(ダンダ)としての役割も果たしています。
トリシューラは主にシャイヴァ系神格が所持・使用するとされる


Erattakulangara Devi Temple 3.
トリシューラは主にシャイヴァ系神格が所持・使用するとされる神格武器です。



シャイヴァ系神格とは、シヴァの化身やシヴァの力を完全に体現する女神たちを指します
- ドゥルガー
悪魔マヒシャースラ討伐のためシヴァから授けられたトリシューラを使用
ドゥルガーのトリシューラは「秩序回復のための破壊」を体現 - カーリー
ドゥルガーの激化形態・化身
カーリーのトリシューラは「慈悲なき破壊」「時間(カーラ)の支配」を象徴 - バドラカーリー
シヴァの怒りから生まれた女神 - ヴィーラバドラ
シヴァの怒りの化身
ダクシャの供犠を破壊した存在
トリシューラは「破壊を通じて宇宙秩序を回復する力」を象徴するので、シヴァの力を体現する神にしか使えません。



トリシューラは単なる武器ではなく「神格の権能の延長」なのです
シヴァの息子スカンダはトリシューラを使わない


Skanda at Miaoying Temple.
シヴァの息子である軍神スカンダはシャイヴァ系神格ですが、トリシューラを使いません。
スカンダの武器は神槍ヴェールであり、神話の中でトリシューラを使ったシーンは出てきません。
ただしヴェールはシヴァの力(=トリシューラ的権能)を受け継いだ武器と解釈されています。
スカンダは魔王ターラカースラをヴェールを用いて打ち倒しますが、その威力の根源はシヴァの破壊神性でした。



伝承によっては「シヴァの力を宿した武器」と表現されてトリシューラと混同されることがありますが、厳密にはスカンダの武器はヴェールでありトリシューラは使いません
トリシューラにまつわる神話


トリシューラにまつわる神話をまとめました。
タップで飛べます
盲目の魔神アンダカの串刺し


Sculptured panel of Shiva spearing Andhaka in Hindu Cave XXIX (Dumar Lena), Ellora – DPLA – 1abc0d3efd24f5d366c375c9b93a77b2.
パールヴァティーが遊び心で夫であるシヴァの目を両手で覆うと世界が闇に包まれ、シヴァ神が流した熱い汗(または熱気)から、一人の魔神が生まれました。
彼は生まれつき目が不自由であったため、「アンダカ(盲目、闇)」と名付けられました。
成長したアンダカは強大な力を得てアスラ(魔族)の王となりますが、己の出自を知らぬまま「世界で最も美しい女性」を妻にしようとします。
しかし、その女性は実の母であるパールヴァティーでした。
母を奪うためにカイラス山へ攻め入ったアンダカに対し、激怒したシヴァはトリシューラを突き立てました。
シヴァは彼を殺すのではなく、トリシューラで突き刺したまま高く掲げて空中で固定しました。
長きにわたってトリシューラの上で太陽の熱とシヴァの神気にさらされ続けたアンダカは、ついに己の邪念と無知(盲目)を焼き尽くされて改心します。
アンダカはシヴァを讃える信者へと生まれ変わり、許されてシヴァの軍勢(ガナ)の一員となりました。



この神話はトリシューラが敵を滅ぼすだけでなく、その罪を「浄化」する救済の力を持つことを示しています
息子ガネーシャの首を切り落とす


Ganesha deva.(1842年)
トリシューラの切れ味を象徴する、最も衝撃的なエピソードが「ガネーシャ事件」です。
シヴァが外出中、妻パールヴァティーは自分の垢(あか)から理想の子供を作り、息子「ガネーシャ」を誕生させました。
パールヴァティーはガネーシャに入浴中の見張りを命じ、「誰も中に入れてはいけませんよ」と言いつけます。
そこに帰宅したシヴァですが、ガネーシャは父の顔を知らなかったため、「ダメだと言われたからダメだ」と頑として家に入れません。
問答の末、激怒したシヴァは神の武器(多くの伝承ではトリシューラとされる)を投げつけ、見知らぬ少年の首をスパパンと切り落としてしまいました。
後でそれが自分の息子だと知ったシヴァは驚愕し、慌てて近くにいた象の首を持ってきてくっつけて生き返らせました。



これがガネーシャが象の頭をしている理由であり、神の武器は「たとえ息子であっても容赦なく断ち切る」という非情な威力を物語っています
魔王ターラカースラ討伐


RAMAPPA SCULPTURE.jpg by S1photostudios / CC BY-SA 4.0
魔王ターラカースラは、創造神ブラフマーから「シヴァ神の息子にしか殺されない」という無敵の加護(ボーン)を授かっていました。
当時、シヴァは深い瞑想に入っており、子供を作る様子がなかったためターラカースラは「自分を殺せる者はいない」と確信して神々を虐げ、天界を支配しました。
困り果てた神々は、シヴァの瞑想を解くために愛の神カーマを派遣するなど奔走します。
その甲斐あってついにシヴァは目覚め、パールヴァティーとの間に軍神スカンダ(カールッティケーヤ)が誕生しました。


Skanda at Miaoying Temple.
シヴァ神の力(精気)を受け継いだスカンダは、神槍ヴェールを振るって見事に魔王ターラカースラを討ち果たしました。



トリシューラそのものでの決着ではありませんが、「トリシューラを持つシヴァの力(血統)でなければ倒せない悪」が存在したことを示す重要な戦いです
トリシューラが現代作品に与える影響


トリシューラはギリシャ神話のポセイドンのトライデントと一部混同されていますが、「三叉槍」の代名詞としてゲームやファンタジー作品に登場します。
- 『ファイナルファンタジー』シリーズ
竜騎士(ドラグーン)が使用する強力な三叉槍(トライデント)型の武器として登場
アイテムレベルの高い強力な装備として、竜騎士のステータス上昇
「三叉槍」「破壊神モチーフ」の系譜としての影響 - 『女神転生』シリーズ
主に破壊神(Diety)や魔神(Fiend)といった悪魔として登場する存在
物理攻撃ではなく氷結系のスキルを持つ
「三叉槍」「破壊神モチーフ」の系譜としての影響 - 遊☆戯☆王
水属性ドラゴン「氷結界の龍 トリシューラ」として登場
設定上も「強力な力を持つ古の龍」とされている
またラノベ「とある魔術の禁書目録(インデックス)」にも、作中に「トリシューラ」という名の魔術・霊装(術式/武装)が存在します。



神話の意味そのものをモチーフにしているケースと、単に名前だけ借りているケースが混ざっていますが、現代でも最強武器の一角として人気です
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