【ヴィジャヤ】インド神話シヴァ・カルナの武器

【ヴィジャヤ】インド神話シヴァ・カルナの武器
ヴィジャヤを持ったカルナ
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名称ヴィジャヤ
神話体系インド神話(マハーバーラタ)
所有者破壊神シヴァ
英雄パラシュラーマ
英雄カルナ
製作者工匠神ヴィシュヴァカルマン
形状神弓
主な能力所有者に勝利をもたらす
決して切れない弦
轟音
ヴィジャヤデータベース

ヴィジャヤはインド神話に出てくるシヴァが所持し、後にカルナに受け継がれたと語られる伝説の神弓です。

まい

名前は「勝利(ヴィジャヤ)」を意味し、この弓を持つ者には勝利がもたらされるとされています

シヴァが「トリプラ(三つの魔都)」を破壊した際に使用されたことでも知られ、その威力はアルジュナの「ガーンディーヴァ」と並ぶ、あるいはそれ以上とも評されます。

『マハーバーラタ』において、カルナは師匠パラシュラーマからこの弓を授かり、最終決戦(クルクシェートラ17日目)でのみ使用しました。

現代では「カルナ=槍(ヴァサヴィ・シャクティ)」の印象が強いですが、カルナが人生の最後に握っていた武器は、この「勝利の弓ヴィジャヤ」でした。

勝利の弓でありながらカルナが勝利できなかった伝説の弓について、詳しく解説していきます。

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ヴィジャヤ誕生秘話

Bearded Shiva.(1940年)
画像出典:Wikimedia commons
Bearded Shiva.(1940年)

ヴィジャヤは、神々の間をリレー形式で渡り歩いてきたガーンディーヴァとは異なり、「破壊の継承」という重い歴史を持っています

まい

ヴィジャヤは工匠神ヴィシュヴァカルマンによって作られ、最初に破壊神シヴァの手に渡りました

一部の『マハーバーラタ』系伝承では、シヴァはヴィジャヤを用いて、神々ですら手を焼いた鉄壁の空中都市「トリプラ」を一撃で消滅させたと言われています。

ただし一般的なシヴァ神話では、トリプラ破壊に用いられた弓はピナーカ、あるいは宇宙弓として語られる場合が多いです。

その後、弓はインドラを経由して(諸説あり)、シヴァの弟子であり「戦士を殺す戦士」である英雄パラシュラーマに授けられました。

パラシュラーマはヴィジャヤを振るい、当時の暴虐な王族(クシャトリヤ)たちを21回も殲滅しました。

そしてパラシュラーマは引退する際、弟子入りしたカルナの武術の才能と献身的な奉仕を認め、自身の最強の武器であるこのヴィジャヤを譲り渡しました。

ヴィジャヤの能力

ヴィジャヤイメージ

ヴィジャヤの能力は「一撃の重さと呪術的な加護」に特徴があります。

まい

機関銃のような連射性能を誇るアルジュナのガーンディーヴァとは対照的です

  • 絶対の強度
  • マントラの増幅
  • 轟音による威圧

ヴィジャヤは決して折れることも、弦が切れることもないと言われています。

呪文(マントラ)の力を増幅させる特性があり、ヴィジャヤから放たれるブラフマーストラなどの神造兵器(アストラ)の威力を最大限に引き出すとも語られます。

そして弦を弾く音は雷鳴のように響き渡り、音だけで敵の心臓を縮み上がらせるとも描写されます。

インド神話の英雄カルナの神弓の力は格付けするとは何位にランクインするのでしょうか?

気になる順位はインド神話の最強武器ランキングの記事で発表していますので、合わせてチェックしてみてくださいね。

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ヴィジャヤの所有者はシヴァ・カルナ

Karna-kl.jpg
画像出典:Wikimedia commons
Karna-kl.jpg

ヴィジャヤの所有者はインド神話の破壊神シヴァと悲劇の英雄カルナです。

まい

もともとは破壊神シヴァのもので、インドラを経由してカルナに継承されました

カルナは太陽神スーリヤの息子でありながら、数奇な運命により敵側の将としてアルジュナと戦いました。

カルナの武器・防具

一般的にはカルナの武器は「槍(ヴァサヴィ・シャクティ)」のイメージが強いですが、神話の原典におけるカルナは「弓の名手(アーチャー)」です。

師匠パラシュラーマから授かったこのヴィジャヤこそが、槍を失った後の彼の真の切り札でした。

もし呪いがなければ、カルナはこの弓でアルジュナに勝っていたとも言われています(詳しくは「ヴィジャヤにまつわる神話」参照)。

カルナの複雑な出自とアルジュナとの宿縁

Karna and Arjuna.(1899年)
画像出典:Wikimedia commons
Karna and Arjuna.(1899年)

カルナはパーンダヴァ5兄弟(アルジュナたち)の母であるクンティーが、結婚前に「神を呼び出すマントラ」を試しに唱えてしまい、太陽神スーリヤとの間に産んだ子供です。

しかし未婚の母となることを恐れたクンティーによって、カルナは生まれてすぐに川へ流されてしまいました。

その後、御者(身分が低いとされる職業)の夫婦に拾われて育てられたため、本来は王族でありながら「御者の息子」として蔑まれながら育ちました

ある武芸大会において、カルナはアルジュナに匹敵する弓の腕前を見せつけますが「御者の息子に王族と戦う資格はない」と侮辱され、挑戦を拒否されます。

このとき唯一カルナを認め、その場で「アンガ国の王」に取り立てたのが、反パーンダヴァ陣営の中心人物ドゥルヨーダナ(カウラヴァ家の長男)でした。

Duryudana, wayang kulit puppet, Java, collected in 1894, wood, rawhide, metal, pigment - Pacific collection - Peabody Museum, Harvard University - DSC06109.
画像出典:Wikimedia commons
Duryudana, wayang kulit puppet, Java, collected in 1894, wood, rawhide, metal, pigment – Pacific collection – Peabody Museum, Harvard University – DSC06109.

以来、カルナは「俺の命も力も、全て友(ドゥルヨーダナ)のために捧げる」と誓い、生涯にわたってアルジュナたち正義の味方側と敵対することになります。

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身分が低いことを偽ったため、カルナは師匠の呪いでブラフマーストラ発動の瞬間に呪文を忘れてしまい、アルジュナとの戦いで敗北してしまいました

ヴィジャヤにまつわる神話

ヴィジャヤイメージ

ヴィジャヤにまつわる神話をまとめました。

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魔都トリプラの破壊(シヴァの武勲)

Album Cover with Shiva as the Destroyer of the Three Cities of the Demons (Tripurantaka) LACMA M.2003.213 (7 of 9).(1875年)
画像出典:Wikimedia commons
Album Cover with Shiva as the Destroyer of the Three Cities of the Demons (Tripurantaka) LACMA M.2003.213 (7 of 9).(1875年)

かつてアスラ(魔族)たちが、金・銀・鉄でできた三つの飛行都市「トリプラ」を作り上げ、世界を支配したことがありました。

まい

トリプラはアスラ族の建築家マヤースラの傑作と言われ、1つ目は地上にあって鉄でできた町、2つ目は空中に浮かぶ銀でできた町、3つ目は天界にある金でできた町の3構造都市と言われています

この都市は「千年に一度、三つの都市が一列に並んだ瞬間に、ただ一本の矢でしか破壊できない」という無敵の加護を持っていました。

神々の懇願を受けた破壊神シヴァは、地球を戦車、太陽と月を車輪としてこのヴィジャヤ(勝利の弓)を手に取りました。

シヴァが弓を引き絞り、三つの都市が一列に重なったその一瞬を射抜くと、都市は一撃で灰燼に帰しました。

まい

この神話は、ヴィジャヤが「世界を終わらせる破壊の一撃」を可能にする弓であることを示しています

ただし一般的なシヴァ神話では、トリプラ破壊に用いられた弓はピナーカ、あるいは宇宙弓として語られる場合が多いです。

重なる呪い、弓を手放した一瞬の隙に敗北

Death of Karna.(19世紀)
画像出典:Wikimedia commons
Death of Karna.(19世紀)

ヴィジャヤは「持っている限り無敵」とされる弓ですが、カルナがアルジュナに敗れた理由は、弓の性能ではなく重なり合った「呪い」にありました。

クルクシェートラ戦争の最中、カルナとアルジュナはブラフマーストラなどの互角の「アストラ相殺合戦」を繰り広げていました。

しかしバラモンの呪いによってカルナの戦車の車輪が泥に沈み、動けなくなったカルナは車輪を持ち上げるため、手からヴィジャヤを離して戦車から降りました。

「戦士の掟として、武器を持たない者を撃つな」とカルナは叫びますが、クリシュナは「お前たちは掟を破ってアビマニュを殺したではないか」と一蹴し、アルジュナに射撃を命じました。

ヴィジャヤを置いたカルナを狙うアルジュナ

このアルジュナに追い詰められた「絶体絶命の瞬間」に師匠パラシュラーマの呪いが発動

カルナは頭が真っ白になり、防御のための最強呪文を思い出せなくなってしまったのです。

最強の弓「ヴィジャヤ」を手放したその一瞬の隙を突かれ、カルナはアルジュナのガーンディーヴァによって首を射ち落とされました。

まい

つまり「ヴィジャヤを持った状態で撃ち合っていれば、カルナが勝っていたかもしれない」という可能性を残したまま、物語は幕を閉じたのです

呪い①師匠パラシュラーマの呪い

カルナは呪いによってブラフマーストラを使えなくなったイメージ

カルナは武術を学ぶため、身分を偽って英雄パラシュラーマに弟子入りしていました。

ある日、パラシュラーマがカルナの膝枕で眠っていた際にカルナの太腿を虫が食い破りましたが、師匠を起こさないように痛みに耐え続けました。

目覚めたパラシュラーマは、その我慢強さを見て「これほどの忍耐力はバラモン(僧侶)ではなくクシャトリヤ(戦士)のものだ」と嘘を見抜きます。

激怒した師匠は「肝心な死の瞬間に、お前は武器を呼び出すマントラを忘れるだろう」という呪いをかけました。

この呪いにより、カルナはヴィジャヤの真価を発揮する最強のマントラ(ブラフマーストラなど)をアルジュナとの決戦で思い出せなくなってしまいました。

呪い②バラモンの呪い

The Battle of Kurukshetra.(1820年)
画像出典:Wikimedia commons
The Battle of Kurukshetra.(1820年)

カルナがかつて狩りの最中、誤ってバラモンの飼っていた子牛を射殺してしまったことがありました。

悲しむバラモンはカルナに対し「お前の戦車の車輪は、死の瞬間に大地に飲み込まれるだろう」という呪いをかけました。

この呪いは、クルクシェートラ戦争の最終決戦、アルジュナと戦っている最中に発動しました。

ヴィジャヤが現代作品に与える影響

現代作品に与える影響

ヴィジャヤは、カルナの「隠された最強武器」として現代作品でも扱われています。

まい

日本では『Fate/Grand Order』での登場で有名です

カルナはランサー(槍兵)として有名ですが、本来の適性であるアーチャー(弓兵)クラスで現界した場合、このヴィジャヤがメインウェポンになると設定されています(※「サンタカルナ」などが使用)。

「拳で殴ったほうが早い」という独自解釈もありますが、設定上は「ガーンディーヴァに対抗しうる唯一の弓」です。

ほかの作品でも、多くの作品で「天才のガーンディーヴァ(連射・技巧)」対「一撃のヴィジャヤ(威力・破壊)」というライバル構造の象徴として描かれます。

名前は「勝利」でありながら、悲劇的な敗北を見届けた弓として、ヴィジャヤはカルナの生き様そのものを象徴する武器なのです。

※インド神話は地域・写本差による異伝が多く、本記事は代表的伝承を基に整理しています。

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参考文献

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  • ミスペディア編集者(著), 『面白いほどよくわかる伝説の武器:武器への理解が深まる独自考察本』, 2023年
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  • 日下晃(著), 『ギリシャ神話の教科書シリーズ壮大なるギリシャ神話の世界』, 2023年
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  • 日下晃(著), 『北欧神話の武器や道具』, 2023年
  • 『ゼロからわかる北欧神話』, 生活情報ブックス, 2025年
  • 森瀬繚(著), 『いちばん詳しい「北欧神話」がわかる事典』, SBクリエイティブ株式会社, 2014年
  • ミスペディア編集者(著), 『面白いほどよくわかるケルト神話:スラスラ読めて一気にわかる神々の物語』, 2020年
  • 森瀬繚(著), 『いちばん詳しい「ケルト神話」がわかる事典』, SBクリエイティブ株式会社, 2014年
  • 宇城卓秀(編集長)・浅野智明(編集), 『伝説の武器・防具イラスト大辞典』, 株式会社宝島社, 2011年
  • かみゆ歴史編集部(編), 『マンガ 面白いほどよくわかる!古事記』, 株式会社西東社, 2017年
  • 谷口雅博(監修者), 『眠れなくなるほど面白い 図解プレミアム 古事記』, 日本文芸社, 2024年
  • ミスペディア編集者(著), 『面白いほどよくわかるインド神話:スラスラ読めて一気にわかる神々の物語』, 2020年
まい

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この記事を書いた人

子供の頃から神話が大好きな主婦です。子供が神話に興味を持ち始めたので、備忘録がてら、いっそ神話武器辞典を作ろう!とサイトを立ち上げました。

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