
| 名称 | イムフル(悪風) |
|---|---|
| 神話体系 | メソポタミア神話(バビロニア) |
| 所有者 | 主神マルドゥク |
| 製作者 | 天空神アヌ |
| 形状 | 気象兵器、暴風 |
| 主な能力 | 敵の口を強制的に開かせる 内臓や腹を膨張させて動きを封じる |
イムフル(悪風)はメソポタミア神話に出てくる英雄神マルドゥクの暴風兵器です。
まいメソポタミア神話の創世記『エヌマ・エリシュ』において、英雄神マルドゥクが振るった最強の武器は剣でも槍でもなく、「イムフル(悪風)」と呼ばれる猛烈な暴風でした
母なる龍ティアマトという世界そのものと言える巨大な怪物を倒すために用意されたイムフル(悪風)。
この暴風は敵の口から体内に侵入し、内側から動きを封じるという、極めて戦術的かつ凶悪な兵器でした。
ファンタジー作品における「風属性魔法」の破壊力のルーツとも言える、神殺しの暴風の驚くべき誕生と、ティアマト討伐の瞬間について解説します。
イムフル(悪風)誕生秘話


Babylonian religion and mythology (1899) (14595850218).
「イムフル」とは、アッカド語で「悪い風」「破壊的な風」を意味します。
イムフル(悪風)は原初の女神ティアマトとの最終決戦に備え、マルドゥクの祖父である天空神アヌによって生み出されました。
アヌ神はマルドゥクのために、東西南北の「四方の風」と、つむじ風や台風を含む「七つの風」を造り出しました。
その中でも、ティアマトを混乱させるための切り札(最終兵器)として用意されたのが、この「イムフル」です。



イムフルは七つの風の一つ、あるいはそれを代表する破壊的な暴風とされています
イムフル(悪風)は、通常の自然現象としての風ではなく、明確に「神を殺すための兵器」としてデザインされた暴風でした。
イムフル(悪風)の能力


イムフル(悪風)の能力は単に相手を吹き飛ばすだけではなく、対巨大生物(ティアマト)に特化した、恐るべき殺傷能力を持っています。
- 強制的な開口と拘束
- 体内破壊と膨張
- 巨神すら拘束する気圧の牢獄
イムフルは、敵が吠えたり魔法を使おうとして口を開いた瞬間にその口へ殺到します。
凄まじい風圧により、敵は「口を閉じることができなくなる」のです。
これによってティアマトの最大の武器である「飲み込むこと」や「呪いの言葉」を封じました。
また、口から侵入したイムフルはそのまま敵の腹の中で吹き荒れ、パンパンに膨れ上がらせることで敵を内側から圧迫。
ティアマトは腹が張り裂けんばかりに膨張し、身動きが取れなくなりました。
イムフル(悪風)は外側の硬い鱗を貫くのではなく、柔らかい内側から無力化するという、極めて合理的で凶悪な能力なのです。



メソポタミアでは風・嵐・洪水はすべて神の力と考えられており、イムフル(悪風)は「自然そのものを兵器化した力」と言えます
イムフル以外の「マルドゥクの武器・装備7種」は以下記事でまとめていますので、合わせてチェックしてみてくださいね。
▶︎【マルドゥクの武器・装備7種一覧】原初の女神ティアマトを倒した神の最強装備


イムフル(悪風)の所有者はマルドゥク


Marduk and pet.(1903年)
イムフル(悪風)を操ったのは、バビロニアの英雄神マルドゥクです。
マルドゥクは「4つの目と4つの耳」を持ち、口から火を吹くという異形の英雄ですが、その戦い方は非常に知略に富んでいました。
彼はイムフル単体で戦ったわけではなく、以下のコンボ攻撃を使用しています。
- マルドゥクの
網でティアマトを捕らえて動きを制限する - イムフル(悪風)
口を開けた瞬間に風を流し込み、腹を膨張させて無力化する - 弓矢
動きが止まったティアマトの、大きく開いた口から矢を放って心臓を射抜く
イムフル(悪風)はこの「必勝コンボ」の中核をなす、最も重要な武装でした。



嵐と風は本来であれば大気神で最高神エンリルの領域ですが、マルドゥクがそれを操ることは「旧世代の最高神の力を継いだ」という象徴とも考えられます
イムフル(悪風)にまつわる神話


Babylonian religion and mythology (1899) (14595850218).
イムフル(悪風)にまつわる神話は「ティアマト討伐」です。
創世叙事詩『エヌマ・エリシュ』のクライマックス、マルドゥク対ティアマトの一騎打ち。
ティアマトは怒り狂い、マルドゥクを一口に飲み込もうと巨大な口を限界まで開けました。
しかし、それこそがマルドゥクの狙いでした。
マルドゥクはティアマトが口を閉じる暇を与えず、即座に「イムフル(悪風)」をその喉の奥へと叩き込みます。
腹の中に暴風を詰め込まれたティアマトは苦悶し、叫び声を上げることもできなくなりました。
その隙を見逃さず、マルドゥクは弓を引き絞り、開かれた口から体内へ向けて矢を放ちました。
矢は胃を突き破って心臓を寸断し、母なる龍ティアマトの命を絶ったのです。
このイムフルによる一撃がなければ、マルドゥクの矢も硬い鱗に阻まれていたかもしれません。



物理攻撃(矢)はトドメであり、勝敗を決めたのは“風(イムフル)”…
まさに世界を救った「風」だったのです
イムフル(悪風)が現代作品に与える影響


イムフル(悪風)は強力な「風属性の魔法」の元祖として現代作品に影響を与えています。
イムフル(悪風)が現代作品に与える影響
ほか神話の「嵐を操る神が怪物を倒す」源流


イムフル(悪風)はメソポタミア神話以外の神話に出てくる「嵐を操る神が怪物を倒す」というストーリーの原型の一つと考えられます。
- ゼウスの雷霆(ケラウノス)
- スサノオの暴風
- インドラのヴァジュラ



メソポタミア神話は世界最古の神話として、天命の粘土板(トゥプ・シマティ)のゼウスとテュポンへの継承のように、さまざまな世界観に影響を与えています
ゲームでの空間破壊・圧縮攻撃の原型


イムフル(悪風)は「内部から破壊する風」「閉じ込めて圧殺する嵐」などの現代ファンタジーの定番設定として登場します。
- 『Fate/Grand Order』
マルドゥクの「原初の母を引き裂いた暴風の概念を宿した手斧(トゥ・ム・ウツ)」が登場
イムフルによる体内破壊のエピソードが、斧による切断という形で再解釈されていると考えられる - 『ファイナルファンタジー』シリーズ
「イムフル」という名前の敵専用技や、風属性の魔法が登場
『FF11』や『FF14』などの作品では、強力な風属性攻撃としてその名が使われている
「風魔法=敵を切り刻む、吹き飛ばす」というイメージの原点は、このマルドゥクの暴風にあると言えます。



「防御無視」「内部ダメージ」「行動封じ」という最上位デバフ攻撃としてイムフル(悪風)は登場することがあります
風使い・ウィンドユーザーの元祖


ファンタジー作品において、風を操る能力者が「カマイタチのように切断する」だけでなく、「圧縮した空気で内側から破壊する」「呼吸を封じる」といった戦い方をする場合、そのルーツはイムフル(悪風)にあると考えられます。
イムフル(悪風)は「風は目に見えないが、最も恐ろしい凶器になる」ことを証明した最初の神話兵器なのです。



イムフルとはマルドゥクが振るった“悪風”の名を持つ神話兵器であり、剣よりも速く、雷よりも容赦なく、世界最古級の「嵐による怪物討伐」を成し遂げた破壊の象徴なのです
マルドゥクの武器・装備7種まとめ
▶︎【マルドゥクの武器・装備7種一覧】原初の女神ティアマトを倒した神の最強装備









