
| 名称 | シャルル(Sharur) |
|---|---|
| 神話体系 | メソポタミア神話(シュメール) |
| 所有者 | 戦神ニヌルタ(ニンウルタ) |
| 製作者 | 神々(アヌンナキ) |
| 形状 | 金属や石の重い頭部を持つ打撃兵器、メイス(棍棒、神槌) |
| 主な能力 | 意思を持ち人語を話す 自律飛行と偵察(情報収集) 戦術アドバイス 圧倒的な粉砕力 |
ファンタジー作品において、主人公と会話を交わし、戦術をアドバイスしてくれる「意思を持った武器(インテリジェンス・ウェポン)」。
実はその歴史は非常に古く、人類最古の神話であるメソポタミア神話にすでに登場していました。
まい戦神ニヌルタが愛用した魔法のメイス(棍棒)「シャルル」は神話において意思を持ち、自律行動する武器として描かれる、最古級の「知性武器」の一例です
シャルルは単なる物理的な打撃兵器にとどまらず、自律飛行して偵察を行い、弱音を吐く主人を叱咤激励して勝利へと導くという、現代の「AIドローン」や「戦術サポートAI」を彷彿とさせる驚異の武器でした。
数千年の時を超えて現代の厨二心をくすぐる、最古のインテリジェンス・ウェポン「シャルル」の正体に迫ります。
シャルル誕生秘話


Anunnaki-gods-on-Earth.(859年)
シャルルは天界の物質から神々(アヌンナキ)の手によって創られたと言われています。



ギリシャ神話のヘパイストスや、北欧神話のドワーフのように「私が打ち鍛えました」という明確な製作者(キャラクター)は原典には記されていません
「シャルル」という名前の正確な語源は不明ですが、その圧倒的な破壊力から「千を打ち砕くもの」と解釈されることもあります。
その名の通り、形状は剣や槍ではなく金属や石の重い頭部を持つ打撃兵器「メイス(棍棒)」です。
古代メソポタミアにおいて、メイスは王権や神の力の象徴として非常に重要視されていました。
シャルルは、最高神エンリルの息子である戦神ニヌルタの専用武器として用意された神造兵器であり、その内部には神霊や精霊のような「意思」が宿っています。



シャルルは単なる武器ではなく、独立した人格を持つ存在として描かれ、神の使者のような役割も担っていました
シャルルの能力


シャルルの能力は、現代のSF作品に登場する最新鋭のサポートメカに匹敵します。



シャルルは単なる武器ではなく、戦神ニヌルタの「知恵」そのものを象徴する存在でもありました
意思疎通と戦術アドバイス


シャルルの最大の特徴は、人語を話し、主人であるニヌルタと会話ができる点です。
しかも単にしゃべるだけでなく、状況を冷静に分析し、「次はどう動くべきか」「敵の弱点はどこか」という高度な戦術アドバイスを行います。
荒々しい戦神の力に、冷徹な計算(知恵)をプラスする完璧なサポート機能なのです。
自律飛行と情報収集(偵察)


シャルルは主人の手から離れ、単独で空を飛んで移動することができます。
敵の陣地へ飛んでいって偵察を行ったり、遠く離れた神々の元へ伝令として赴き、神託(アドバイス)を持ち帰ったりすることが可能。
まさに「現代の偵察用ドローン」を先取りしたような能力と言えます。
千を砕く物理的破壊力


シャルルは武器としての基本スペックも超一流です。
「千を打ち砕く」の名が示す通り、怪物の強固な皮膚や岩石の鎧をも粉砕する、圧倒的な打撃力を持っています。
知能だけでなく、純粋な火力(物理力)としても最強クラスのメイスなのです。
シャルルの所有者はニヌルタ


Cropped Image of Carving Showing the Mesopotamian God Ninurta.
シャルルの唯一の主は、シュメール神話における偉大なる英雄神ニヌルタ(ニンウルタ)です。
ニヌルタは最高神エンリルの長男であり、戦争と狩猟、そして農業を司る神でした。
メソポタミア神話における「怪物を討伐するマッチョな戦士」の代表格であり、最重要アイテムとも言える『天命の粘土板(トゥプ・シマティ)』を盗んだ怪鳥アンズーを討伐したのも、このニヌルタ神です。
肉弾戦に強い武闘派のニヌルタと、頭脳派でサポートに回るシャルルというコンビは、バディ(相棒)ものとして非常にバランスの取れた関係でした。
シャルルにまつわる神話


シャルルにまつわる神話をまとめました。
タップで飛べます
怪物アサグとの激闘(ルガル・エ叙事詩)


シャルルが最も活躍するのは、シュメールの叙事詩『ルガル・エ(Lugal-e)』で語られる、怪物アサグとの戦いです。
アサグは疫病と石(岩石)を操る恐るべき悪魔であり、植物を枯らして川を干上がらせる災害のような存在でした。
戦神ニヌルタはアサグを討伐に向かいますが、アサグの生み出す猛烈な熱と嵐、そして岩の軍団を前に、さすがのニヌルタも圧倒されて一度は戦場から逃げ出してしまいます。
ここで活躍したのが、相棒のシャルルでした。
シャルルは単独で空を飛び、天にいる最高神エンリル(ニヌルタの父)の元へ向かい、「どうすればアサグを倒せるか」という助言を求めて戦場へとトンボ返りしました。
戻ってきたシャルルは恐怖に震えるニヌルタに対し、力強い言葉で叱咤激励します。
「恐れることはありません、我が主よ! エンリル様の加護はあなたと共にあります。今こそ前へ進み、アサグを打ち砕くのです!」
武器に励まされ、勇気を取り戻したニヌルタは再び戦場へ舞い戻ります。
そしてシャルルの戦術サポートを受けながらアサグに猛攻を加え、ついにこの恐るべき怪物アサグを討ち果たしました。



シャルルによって世界の秩序は回復し、川は再び流れて大地は蘇りました
まさに世界を救った武器だったのです
怪鳥アンズーの討伐(天命の粘土板 奪還作戦)


Babylonian religion and mythology (1899) (14595850218).
最高神エンリルから「天命の粘土板(トゥプ・シマティ)」を盗み出した怪鳥アンズーを、戦神ニヌルタが討伐に行く神話も有名です。
アンズーは、エンリル神が沐浴のために粘土板を離した一瞬の隙を突いてこれを奪い、山へ逃げ込みました。
ニヌルタは弓矢でアンズーを攻撃しますが、アンズーは粘土板の力を使って「矢を元の素材(木の枝や鳥の羽)に戻せ!」と時間を巻き戻すような魔法を使い、一切の物理攻撃を無効化してしまいます。
攻撃が通じず途方に暮れたニヌルタは、相棒のシャルルに「知恵の神エア(エンキ)の元へ行って、倒し方を聞いてきてくれ!」と命令します。
シャルルは猛スピードで戦場を離脱してエア神の元へ飛び、「アンズーの翼を切り落とせ。翼を治そうと羽を呼び寄せた一瞬の隙に、矢を放て」という完璧な攻略法(戦術アドバイス)を授かり、再びニヌルタの元へ飛んで帰ってきて伝達しました。
ニヌルタはシャルルが持ち帰ったアドバイス通りに動き、見事アンズーを撃ち落とすことに成功しました。



ただし文献によっては、シャルルが使者としてエア(エンキ)の元へ行くと明記されない版もあります
「打ち倒された11の怪物(Slain Heroes)」の討伐


ニヌルタが世界に秩序をもたらすために、シュメールの様々な奇妙な怪物たちを討伐して回ったという連作ショートストーリーのような神話群にもシャルルが登場します。
神話群でニヌルタは「七つ頭の蛇(八岐大蛇やヒュドラの元祖)」「六つ頭の野羊」「石膏の魔物」「銅の魔物」など、多種多様な化け物たちを討伐しました。
この神話においてシャルルは「千を打ち砕くもの」という名前の通り、純粋な「超火力の粉砕兵器」として猛威を振るいます。
シャルルは硬い金属や石の怪物たちを次々と叩き割り、討伐した怪物のパーツをニヌルタの戦車の飾りにするなどの無双ぶりを見せつけました。
シャルルが現代作品に与える影響


シャルルは「インテリジェンス・ウェポンの元祖」や「ドローンの概念」として現代作品に影響を与えています。



シャルルという武器の存在は、「物理で殴る道具」だった神話の武器に「人格」を与えた、革命的な発明でした
シャルルが現代作品に与える影響
インテリジェンス・ウェポンの元祖


現代のRPGやライトノベルには、「喋る剣」や「意思を持つ魔導書」が数多く登場します。
(例:『テイルズ オブ デスティニー』のソーディアン、『NieR Replicant』の白の書、『ゼロの使い魔』のデルフリンガーなど)。
主人公にツッコミを入れたり、世界の知識を解説したりするこれらの「相棒型武器」の系譜は、シャルルにまで遡ることができます。
AIサポートメカ・ドローンの概念
武器そのものが飛行して偵察し、遠隔から情報をもたらすというシャルルの描写は、現代の「ドローン」や、SF作品における「戦術サポートAI」そのものです。
紀元前2000年以上も昔のシュメール人が、現代の最先端テクノロジーとほぼ同じ概念の武器を想像していたという事実は、驚き以外の何物でもありません。
古代の戦神が振るった、千を砕く重たいメイス。
しかしその本質は、どんな魔法よりも頼りになる「賢き相棒」でした。



まさにシャルルは、人類が「孤独な戦場を共に歩むパートナー」を武器に求めた、最古のロマンの結晶なのです








