
| 名称 | ヒュドラの毒矢 |
|---|---|
| 神話体系 | ギリシャ神話 |
| 所有者 | ヘラクレス、ピロクテテス |
| 製作者 | ヘラクレス |
| 形状 | 矢の先端にヒュドラ(怪物)の毒を塗ったもの |
| 主な能力 | 触れるだけで死に至る猛毒 |
ヒュドラの毒矢はギリシャ神話に出てくる英雄・ヘラクレスの武器です。
まいヘラクレスの「12の試練」の中の第2の試練で倒した怪物から作った毒矢です
以下でヒュドラの毒矢について詳しく解説していきます。
ヒュドラの毒矢誕生秘話


Coa Illustration Elements Animal Hydra Statant.(1579年)
ヒュドラの毒矢はギリシャ神話に登場する武器です。
ギリシャの最高の英雄ヘラクレスが「12の試練」に挑む中で製作しました。
ヘラクレスの12の試練
- ネメアの不死身の大獅子(ライオン)退治
- レルネの9頭を持つ毒蛇(ヒュドラ)の退治
- ケリュネイアの金の角を持つ鹿の捕獲
- エリュマントス山の巨大猪の捕獲
- アウゲイアースの30年間掃除していない家畜小屋の掃除
- 怪鳥(ステュムパリデス)の退治
- クレタの牡牛の捕獲
- ディオメデスの人喰い馬の捕獲
- アマゾンの女王(ヒッポリュテー)の帯を獲得
- 3つの体を持つ巨人(ゲリュオン)の牛の捕獲
- ヘスペリデスの園から黄金のりんごを獲得
- 冥界の番犬(ケルベロス)を地上に連れてくる
第2の試練で毒蛇ヒュドラを倒したヘラクレスは、触れただけで死に至るという猛毒の血液(または胆汁)を矢の先に塗りました。
これによって掠るだけで獲物を仕留めるギリシャ神話でも最も恐ろしいと言われる武器を完成させました。



実はヒュドラの毒矢は敵だけでなくヘラクレス自身にも苦痛をもたらすことになりました(ネッソスの策略で苦しむヘラクレス)
ヒュドラの毒矢の能力


ヒュドラの毒矢の能力は「触れただけで死に至る猛毒」です。
しかもヒュドラの毒矢は解毒できない毒で、ものすごい苦痛を伴うと言われています。
あまりの毒性で、ギリシャ神話で最強の呪いのアイテムとも呼ばれています。
呪いのエピソード



ヒュドラの毒を含む息を吸ったり、寝ていた場所を通るだけでも死に至ると言われるほどの猛毒でした
最強の毒を持つヒュドラの毒矢ですが、格付けするとは何位にランクインするのでしょうか?
気になる順位はギリシャ神話の最強武器ランキングの記事で発表していますので、合わせてチェックしてみてくださいね。
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ヒュドラの毒矢の所有者はヘラクレス


Hercules and the Lernaean Hydra(1876年)
ヒュドラの毒矢の所有者はギリシャ神話最高の英雄ヘラクレスです。
ヘラクレスは最高神ゼウスと人間の王女アルクメネとの間に生まれました。





ヘラクレスは半神半人でしたが、ゼウスのお気に入りで死後に星座となって神の一員となった珍しい人間でした
第2の試練でヒュドラの毒矢を製作したヘラクレスは、その後の試練や戦いでもヒュドラの毒矢をよく使用しました。
ヘラクレス亡き後は、英雄ピロクテテスに引き継がれてトロイア戦争の終結にも寄与。


The Trojans Bring the Wooden Horse into Their City(1535年)
ヒュドラの毒矢はギリシャ神話の中でも登場が多い武器の一つです。
英雄たちを含めたギリシャ神話の神々の関係性(家系図)や、武器との関連については「【武器で読み解く】ギリシャ神話の家系図!オリュンポス12神と英雄の神器を解説」で詳しく解説しています。
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ヒュドラの毒矢にまつわる神話


Héraklész Hüdra Iolaosz.(1843年)
ヒュドラの毒矢にまつわる神話をまとめました。
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怪物ヒュドラを倒す「第2の試練」で毒矢を作成


Herakles membunuh Hidra.
ヒュドラの毒矢はヘラクレスの12の試練の2番目「レルネの9頭を持つ毒蛇(ヒュドラ)の退治」の達成時に製作されました。



ヘラクレスはヘラの呪いで妻子を害してしまったので、贖罪のために12の試練に挑むことになりました
ヒュドラは不死身で、9つの首のうち8つの首は倒せても、すぐに傷口から新しい2本の首が生えてきたと言われています。
そのためヘラクレスは甥のイオラオスと協力し、落とした首の傷口を松明の炎で焼いて再生を防ぎながら戦いました。
途中で噛みつかれましたが、ヘラクレスは最初の試練で得たネメアの獅子の毛皮を身につけていたので無傷でした。
そして最後に真ん中にある不死身の首を落とし、巨大な岩の下敷きにしてヒュドラを退治したのです。
ヒュドラの血液(または胆汁)は猛毒だったので、ヘラクレスは自分の矢の先端に塗りつけてヒュドラの毒矢を作り上げました。
誤って賢者ケイローンに当ててしまう


The Education of Achilles(1772年)
ヘラクレスは第4の試練「エリュマントス山の巨大猪の捕獲」に向かう途中でケンタウロス族との間にトラブルを起こして戦うことに。
ヘラクレスはヒュドラの毒矢でケンタウロスを倒しながら、ペロポネーソス半島の東南端のマレアー岬まで追い詰めました。
しかし賢者ケイローンの元まで逃げたエラトスを仕留めるために放ったヒュドラの毒矢が、エラトスの腕を貫通してケイローンの膝に当たってしまいます。
ケイローンは不死身のため、ヒュドラの毒にひどく苦しみ続けることに。
あまりの苦痛に、ケイローンは最高神ゼウスに不死の力を返上して安らかな眠りにつきました。



ゼウスはケイローンの死を悼んで星座「射手座」としました


Sagittarius-bonatti.
ネッソスの策略で苦しむヘラクレス


Hercules Nessus Deianira.
ヒュドラの毒矢は巡り巡ってヘラクレス自身も苦しませました。
ヘラクレスは妻デイアネイラとの旅の途中、エウエーノス河を渡るためにケンタウロスのネッソスの背中にデイアネイラを乗せます。
しかしネッソスはデイアネイラを奪おうと、そのまま走り去ろうとしました。


Guido Reni 038.
怒ったヘラクレスはヒュドラの毒矢で仕留めますが、ネッソスは死の間際にデイアネイラに対して「自分の血は惚れ薬だから夫婦の愛が冷めたときに使うといい」と嘘を言い残します。
デイアネイラはネッソスの嘘を信じ、ネッソスの血液を採取して保管しました。
数年後、ヘラクレスが昔求愛していたというオイカリア王女イオレーを連れ帰ったときにデイアネイラはネッソスの血液を使用することに。
ネッソスの血液をヘラクレスの肌着に付着させたところ、血液中に残っていたヒュドラの毒でヘラクレスは激痛に苦しみます。
ケイローンの苦しみを知っていたヘラクレスは癒されぬ苦痛に耐えかね、我が身を焼き尽くすことしました。


Francisco de Zurbarán 013(1634年)
自ら火葬壇を作り、友人で英雄のピロクテテスに火をつけさせたヘラクレス。
ヒュドラの毒矢は製作者本人への呪いとなるほど強力なアイテムでした。



ヘラクレスを気に入っていたゼウスは、星座「ヘルクレス座」として神の世界に迎えました
英雄ピロクテテスに受け継がれたヒュドラの毒矢


Philoctetes on the Island of Lemnos.(1798)
ヘラクレスの火葬壇に火をつけた見返りとして、英雄ピロクテテスはヘラクレスの弓とヒュドラの毒矢を引き継ぎました。
ピロクテテスはギリシャ軍としてトロイア戦争に参加するため、船に乗ってトロイアに向かいますがその途中で寄ったテネドス島で誤ってヒュドラの矢を足に落としてしまいました。
傷は治らずに悪臭を放ち、ピロクテテスは苦しみ悶え続けます。
ギリシャ軍のオデュッセウスは困って、ピロクテテスをテネドス島に置いたままトロイアに向かってしまいました。
しかし10年経ってもトロイア戦争は終結せず、ヘラクレスの弓とヒュドラの毒がなければ勝利できない運命を悟ります。
そこでオデュッセウスとディオメデスはピロクテテスを迎えに行きますが、ピロクテテスは首を縦に振りません。
一時は友情を利用してピロクテテスからヒュドラの毒矢を騙しとった一行でしたが、神となったヘラクレスがピロクテテスを説得。
無事に和解し、ピロクテテスも治療を受けてトロイア戦争に出陣することになりました。
ピロクテテスはトロイア戦争で、原因となったトロイアの王子パリスを討ち取ったり、トロイの木馬に入って活躍。
トロイア戦争でギリシャ軍を勝利に導きました。



10年以上に及んだトロイア戦争は、パリスの審判とパリスとへレネの駆け落ちから始まりました
「パリスの審判」と「駆け落ち」によって起こったトロイア戦争
海の女神テティスと人間のペーレウスの結婚式には神々がたくさん招かれていましたが、不和の女神エリスだけが呼ばれていませんでした。
怒ったエリスは宴の会場に「最も美しい女神へ」と書いた黄金のリンゴを一つ投げ入れます。


このリンゴを求めて3人の女神が立候補しますが、誰を選んでも揉めるので選ぶ権利をパリスに委ねました。
そこで3人は、パリスにそれぞれ自分を選んだら褒美を出すと言います。
- ゼウスの正妻ヘラ:世界の覇権
- 知恵と戦いの女神アテナ:全ての戦いで勝つ
- 愛と美の女神アフロディーテ:世界一の美女
パリスはアフロディーテを選び、黄金のリンゴを渡しました。


El juicio de Paris.(1781年)
アフロディーテは喜び、エロースの金の矢に世界一の美女ヘレネ(スパルタの王妃)を射らせます。


パリスとヘレネは恋に落ち、トロイアに駆け落ち。
怒ったスパルタ王はヘレネ奪還のためにギリシャ連合軍でトロイアに攻め入り、トロイア戦争が勃発しました。
ヒュドラの毒矢が現代作品に与える影響


ヒュドラの毒矢は「人間が生み出したが、制御不能な強すぎる力」「自己破滅につながる力」「呪いの連鎖」などのテーマとして現代作品にも影響を与えています。
ヒュドラの毒矢が現代作品に与える影響
- ゲームにおける「毒状態」
- 「諸刃の剣」としての力
ゲームにおける「毒状態」


ゲームにおける「毒状態」は、ヒュドラの毒矢の影響を強く受けています。
- 継続ダメージ:即死ではなく苦しみが続く
- 治癒不可の呪い:回復魔法が効かない呪いのような毒
- 即死効果:直撃すると絶大な効果



あらゆるゲームで見る「毒状態」は、まさにヒュドラの毒矢の能力を活かした設定なのです
「諸刃の剣」としての力


ヒュドラの毒矢には「強すぎる力は、敵だけでなく使用者自身の身も滅ぼしかねない」という、諸刃の剣の力として象徴されることもあります。
- 呪われた力、禁術:強大な力だが、使うと使用者の命が削られる
- 自己犠牲の力:敵を倒せるが、自身も無事では済まない



絶大だからこそ扱いどころが難しい、という力は切り札や緊張感としてゲームや漫画に多用されています
「生物化学兵器」の原型


ヒュドラの毒矢は、まさに元祖「生物兵器」です。
一度作られてしまうと人間の手には制御しきれず、敵(トロイア軍、ケンタウロス)だけでなく味方(ケイローン、ヘラクレス)まで区別なく苦しめます。
現代でも兵器の暴走はヒュドラの毒矢からインスパイアされたモチーフとも考えられます。
- 核兵器
- 細菌などの生物兵器
- AIの暴走
ヘラクレスが製作したことで賢者ケイローンを苦しめたり、ネッソスを通じて自分自身の苦痛につながり、ピロクテテスの苦難も招いた…という呪いの連鎖を招いたヒュドラの毒矢。
まさに「作った人間が報いを受ける」という現代的なテーマの原型にもなっています。



ヒュドラの毒矢は「絶大な毒」という物理面だけでなく、「強すぎる力と破滅」という皮肉的な運命の着想源でもあるのです
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