
| 名称 | 勝利の剣(特別な名称なし) |
|---|---|
| 神話体系 | 北欧神話 |
| 所有者 | フレイ |
| 製作者 | ドワーフ? |
| 形状 | 刀身が細く、ルーン文字が刻まれている |
| 主な能力 | 意思を持っており、勝手に鞘から飛び出して自動で巨人をも殲滅する |
勝利の剣は北欧神話に出てくる豊穣の神フレイの武器です。
まい勝利の剣は最強の無人兵器でしたが、妻を得るためにラグナロク前に手放ししまったので神々は敗北したとも言われています
以下で勝利の剣について詳しく解説していきます。
勝利の剣誕生秘話


勝利の剣は北欧神話に登場する武器です。
製作者はドワーフ、一説にはイーヴァルディの息子で鍛冶屋のヴェルンドと言われています。
どのような経緯で豊穣の神フレイに渡ったのか不明ですが、ヴァン神族として妖精の国アールヴヘイムに住んでいた頃から所有していたようです。



フレイが人質交換でアースガルズに来たときにも勝利の剣を持ってきたと言われています
人質交換の原因となった「アース・ヴァン戦争」
領土拡大や黄金への欲得に溺れたアース神族が、魔術に長けたヴァン神族に戦争を挑もうとします。
オーディンが魔槍グングニルをヴァン神族の軍勢に向かって投げ入れたことが開戦の合図となり、アース・ヴァン戦争が起こりました。


Æsir-Vanir war(1895年)
アース・ヴァン戦争はこう着状態が続きましたが、「アース神族」と「ヴァン神族」がそれぞれ人質を交換することで戦いは和解。
- アース神族:ヘーニル、ミーミル
- ヴァン神族:ニョルズ、フレイ、フレイヤ
長きに渡った神々の戦いは終結し、アースガルズに一時の平和が訪れました。
勝利の剣の能力


勝利の剣は意思を持っており、勝手に鞘から飛び出して自動で巨人をも殲滅する能力を持っています。
刀身は細身で、ルーン文字が刻まれていました。
このルーンの魔力によって自動で敵を切り裂いて、主人の手元まで戻ってきたと言われています。



神々にとっては強大な敵であり、ラグナロクでも敵となった巨人族相手でも勝利の剣は十分な威力を発揮しました
勝利の剣の所有者はフレイ


Freyr (1832) from Die Helden und Götter des Nordens, oder Das Buch der sagen.(1832年)
勝利の剣の所有者は豊穣の神フレイです。
豊穣の神フレイはヴァン神族という魔術を得意とする平和な神族出身の神様でした。



豊穣の神フレイはヴァン神族の時には戦いの神だったと言われています
勝利の剣がどんな経緯でフレイに渡ったのかは不明です。
しかし北欧神話内では、勝利の剣はフレイの剣であり、美しい巨人族の妻ゲルズを得るために失ったと伝えられています。
フレイがゲルズを妻にしてからは、従者スキールニルに与えたと言われていますが、その後の所在は不明です。
勝利の剣にまつわる神話


Freyr (Walhall).(1888年)
勝利の剣にまつわる神話をまとめました。
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美しい巨人族の妻ゲルズを得るために失った


Gerdr by Theaker.
あるとき豊穣の神フレイは主神オーディンのいない間にフリズスキャールヴ(全宇宙を見渡せる玉座)に座ってしまいます。
すると豊穣の神フレイは巨人族の国ヨトゥンヘイムに見たことがないほど美しい女巨人ゲルズを見つけました。



ゲルズの美しさは手を伸ばすだけで周囲の世界が輝くほどだったそうです
一目でゲルズに惚れた豊穣の神フレイは、食事も喉を通らないほどの激しい恋煩いに陥ってしまいました。
フレイの父である海の神ニョルズは息子の憔悴ぶりを心配して、フレイの忠実な従者スキールニルに理由を聞き出すように命じます。


Ed0010.
スキールニルに問いただされ、豊穣の神フレイは恋の悩みを打ち明けて「アールヴヘイムを離れられない自分の代わりにゲルズに求婚してきてくれ」と頼みました。
スキールニルは巨人族の国は危険なので見返りとして勝利の剣と魔法の馬が欲しいといいます。
とんでもない要求ですが、恋に目が眩んでいる豊穣の神フレイは悩みながらも了承してしまいました。
魔法の馬で炎の壁を越え、巨人の国に入ったスキールニルは女巨人ゲルズに豊穣の神フレイに嫁ぐように話します。
巨人は神々の敵でもあるので、ゲルズはなかなか首を縦に振りません。
スキールニルが若さを保つ黄金のりんごで誘惑したり、剣で脅しますが効果はありませんでした。


Skirnir wirbt um Gerda.(1903年)



このとき使われた黄金のりんごは不老を与える「イドゥンの林檎」とは異なるただの黄金のりんごだったと言われています
そこで最終手段としてスキールニルは呪いのルーンでゲルズを脅迫。
さすがのゲルズも渋々了承して豊穣の神フレイの妻となることになりました。
ラグナロクでは勝利の剣は使われなかった


Odin und Fenriswolf Freyr und Surt.(1905年)
邪神ロキとその子供達が、炎の巨人たちとアースガルズに攻めてきたことを知らせるギャラルホルンがユグドラシルの9つの世界に響きわたり、ついにラグナロクが開戦。
世界樹ユグドラシルの9つの世界


Yggdrasil.(1847年)
- アースガルズ:アース神族の国
- ヴァナヘイム(ヴァナランド):ヴァン神族の国
- アールヴヘイム:妖精の国
- ミズガルズ:人間の国
- ヨトゥンヘイム(ウートガルズ):巨人の国
- ニザヴェッリル:小人の国
- スヴァルトアールヴヘイム:黒い妖精の国
- ニヴルヘイム:霧の国(奥にヘルヘイム(死者の国)がある)
- ムスペルヘイム:炎の国
勝利の剣をスキールニルに与えてしまった豊穣の神フレイは、ラグナロクでは剣なしで戦わなければなりませんでした。
豊穣の神フレイの相手は炎の巨人の王スルトです。
スルトは太陽よりも明るく輝く炎の剣を携えていましたが、豊穣の神フレイは鹿の角で立ち向かうことに。
もともと戦いの神だったフレイは勇敢に戦いましたが、鹿の角ではスルトの炎の剣には敵いません。
フレイはスルトによって切り倒されてしまいました。



このとき勝利の剣があればスルトに勝てた、とも言われており、恋の代償としてはかなり大きな損失ですよね
勝利の剣が現代作品に与える影響


勝利の剣は武器そのものの武器そのものというよりも、武器の特性や神話の文脈が現代作品に影響を与えています。
勝利の剣が現代作品に与える影響
「自動戦闘武器(オートマタ)」の原型


勝利の剣の最大の特徴は「持ち主がいなくても、ひとりでに戦う」という自動戦闘能力です。



現代のファンタジー作品における「自律型兵器」の古い原型といえます
- 魔法の剣・空飛ぶ剣
- 意思を持つ剣
- 自動防御の最強の剣
ゲームやアニメで登場する、主人公の周りを自動で浮遊して攻撃・防御する剣も勝利の剣のオマージュともいえます。
また剣自体が意思を持って持ち主を守るために自動で動くという設定にも影響を与えています。
「愛のために最強の武器を手放す」という物語の型(カタルシス)


勝利の剣の北欧神話での立ち位置は、戦闘力の高さというよりも「恋のために最強の力を手放す」というドラマチックなストーリー展開にあります。
現代作品にも、愛のために力(使命・権力)を捨てるのか、というストーリー性に影響を与えています。



「世界を救うための力」か「愛する人」か、を天秤にかけて後者を選ぶという葛藤は多くの作品で使われる王道テーマの一つです
フレイの選択はこの「力か愛か」と選択の典型的なお手本であり、スパイダーマン2で主人公ピーターがメリーとの生活のためにスパイダーマンの力を失いかけるストーリーと構成が似ています。
「最強の武器を失ったこと」による破滅(フラグ)


勝利の剣に関する神話は「最強の剣を失った」ことで迎える「破滅」までがセットになっています。
ゲームや漫画でも「あの時あれを捨てなければ…」というストーリー展開がしばしば見られます。



序盤で重要アイテムを手放したことで、クライマックスで敗北する「因果応報」の伏線としても使われます
勝利の剣は「力を手に入れるために何かを失う」のと逆で、「愛のために力を失った」ことの恐ろしさを示すアイテムとして機能します。
小説などでは、主人公が一時の感情で捨てた装備や能力に対して読者が「これは後で大変なことになるだろう」とフラグを予感する装置としても優秀です。








