
| 名称 | ナグルファル |
|---|---|
| 神話体系 | 北欧神話 |
| 所有者 (船長) | 巨人フリュム(またはロキ) |
| 製作者 | なし あるいは人類全体 |
| 形状 | 死者の手足の爪で作られた世界最大の船 |
| 主な能力 | ラグナロクで敵軍(巨人・死者)を輸送する |
ナグルファルは北欧神話に出てくる巨人フリュム(またはロキ)が船長を務める世界最大の船です。
まいナグルファルは「この船が完成したら世界が終わる(ラグナロクが訪れる)」と言われる終末時計のような船でした
北欧神話には、フレイの持つ魔法の船スキーズブラズニルよりもさらに巨大で、恐ろしい船が存在します。
それが死者の爪で作られた船、ナグルファルです。
「爪の船」を意味するこの船は、ラグナロク(終末の日)に巨人や死者の軍勢を乗せてアースガルズへ攻め込むために、長い年月をかけて建造され続けています。
ナグルファルが完成して海に浮かぶ時こそが、神々と人類の最期の日となるのです。
以下でナグルファルについて詳しく解説していきます。
ナグルファル誕生秘話


ナグルファルは北欧神話に登場する巨大な船です。
製作者はおらず、「人間の死」と「不作法(爪を切らないこと)」によって自動的に組み上がっていくと言われています。
ナグルファルの材料は「死者の爪」で、爪を切らずに埋葬された死者の爪を集めて作られました。
古代北欧の人々にとって死者の爪を切らずに埋葬することは「怠慢」や「不敬」だったそうです。
そのため、古代北欧では「死者の爪は短く切って埋葬しなければならない」と信じられており、そうすればナグルファルの完成(=ラグナロクの到来)を遅らせられると考えられていました。



あえて製作者というなら、日頃から爪も切らず死者の爪も整えなかった「人類全体」とも言えます
ナグルファルの能力


ナグルファルの能力は「世界最大の大きさ」と「大洪水によって動き出す」ことです。
北欧神話の原典に近いと言われる「スノッリのエッダ」には「最も精巧な船はスキーズブラズニルだが、最も巨大な船はナグルファルだった」と記されています。
なんと巨人族の軍勢を丸ごと乗せられるほどの山のような巨大さだったそうです。
ラグナロクが始めると、大蛇ヨルムンガンドが海で暴れ回って陸地を飲み込むほどの大洪水を起こします。
ナグルファルはこの大洪水によって係留が解かれ、海に浮かび上がるとされています。



ナグルファルは洪水で浮かぶまでは、死者の国ヘルヘイムの奥にあるナーストレンド(死体の岸辺)で作られて係留されていました
ナグルファルの船長はフリュム、またはロキ


Faroe stamp 435 Intro to Ragnarok.
ナグルファルの所有者は不明ですが、船長は巨人フリュムまたは邪神ロキと言われています。
北欧神話の原典に近いと言われる「スノッリのエッダ」には、霜の巨人たちのリーダーであるフリュムが舵をとって巨人族を率いてアースガルズに攻め込むと書かれています。
しかし、より古い北欧神話の原典である「古エッダ(巫女の予言)」には、東の方から邪神ロキが舵をとって、ムスペルの軍勢や怪物たちを運んでくると謳われています。
どちらにせよ、ナグルファルには神々の敵が乗っており、アースガルズを攻め滅ぼす軍艦なのです。



スノッリのエッダはわかりやすい「物語・教科書」、古エッダは動かぬ証拠である「歴史的史料」と考えられています
(信ぴょう性だけでいえば古エッダの方が真実に近いです)
「スノッリのエッダ」と「古エッダ(巫女の予言)」の違い
| 項目 | スノッリのエッダ (散文エッダ) | 古エッダ (巫女の予言) |
|---|---|---|
| 成立時期 | 新しい 1220年ごろ | 古い 9〜11世紀 |
| 性質 | 解説書(教科書) スノッリが古エッダなどを元に、物語として整理・編集したもの | 一次資料(原典) 口承で伝わっていた詩を書き留めたもの |
| 信ぴょう性 | 解釈が含まれる 独自解釈やキリスト教的価値観による脚色、矛盾の修正が入っている可能性がある | 高い 当時の人々の信仰や世界観がそのまま残っている |
| 読みやすさ | 高い 物語として筋が通っており、具体的でわかりやすい | 低い 詩的で抽象的、謎めいた表現が多い |
ナグルファルにまつわる神話


ナグルファルにまつわる神話は「出航=ラグナロクの開戦合図」に関するお話です。
世界中で道徳が廃れて争いが増えると、死者の供養(爪切り)もおろそかになってナグルファルは急速に完成に近づきます。
フィンブルの冬(3年も続いた長く厳しい冬)が終わると大地が揺れ、ヨルムンガンドが暴れて海が荒れて、ついにナグルファルが完成して解き放たれました。
ナグルファルは洪水の波に乗ってアースガルズのヴィーグリーズの平原へ向かいます。



ヴィーグリーズの平原とは、ラグナロクの決戦の地とされている場所です
すでに大狼のフェンリルや大蛇ヨルムンガンドも終結しており、船から降りた巨人・死者の軍勢が合流して神々との最終決戦が始まりました。


Kampf der untergehenden Götter by F. W. Heine.(1882年)
ナグルファルは巨人や死者たちを戦場(ヴィーグリーズの平原)へ運び込むという最大の役割を果たし、ラグナロク開戦の火蓋を切りました。
そして戦いの最後には、炎の巨人スルトの炎の剣が放った業火によって世界樹ユグドラシルもろとも焼かれて海に沈みました。



北欧神話の長い歴史の中で積み上げられた「死」と「怠慢」の象徴は、古い世界とともに消失したのです
ナグルファルが現代作品に与える影響


ナグルファルはそのグロテスクな設定と「巨大な幽霊船」というヴィジュアルで、ダークファンタジー作品に多大な影響を与えています。
ナグルファルのモチーフ例
- ウィッチャー3 ワイルドハント:ナグルファルが登場
- ワールド・オブ・ウォークラフト:ナグルファルが登場
- ファイアーエンブレム 聖魔の光石:「死」「終末」イメージから闇の魔導書の名前に採用
そのほかにも、ナグルファルは骨や死体でできた巨大な船というデザインの元祖の一つとなっています。



映画やゲームに登場する幽霊船のモチーフの一つとして有名です








