
| 名称 | 天之尾羽張(アメノオハバリ) 伊都之尾羽張(イツノオハバリ) 十拳剣(とつかのつるぎ) |
|---|---|
| 神話体系 | 日本神話(記紀神話) |
| 所有者 | イザナギ |
| 製作者 | 不明(別天津神由来の原初の剣) |
| 形状 | 束が拳10個分もある巨大な直刀 |
| 主な能力 | 神殺し 火の神(カグツチ)をも斬る斬れ味 武神(タケミカヅチ)を生み出す |
天之尾羽張(アメノオハバリ)は日本神話に出てくるイザナギの武器です。
まい天之尾羽張(アメノオハバリ)は日本神話において「神さえも斬り殺す最強の処刑剣」として登場します
この剣の最大の特徴は、単なる武器ではなく「意志を持った神様」としても扱われている点です。
最強の武神タケミカヅチの実の父親であり、国譲りの際には重要なアドバイザーとしての役割も果たしました。
愛憎入り混じる悲劇の引き金となった、血塗られた神剣について解説します。
天之尾羽張(アメノオハバリ)誕生秘話


Green willow and other Japanese fairy tales (1910) (14593788578).(1910年)
天之尾羽張(アメノオハバリ)は「十拳剣(とつかのつるぎ)」と呼ばれる剣の中の一本です。
イザナギの剣で製作者は不明ですが、別天津神(ことあまつかみ)などの原初の神々によって作られ、高天原からもたらされたと考えられます。
もしくは、世界の始まり(天地開闢)に近い段階から存在していた「高天原の遺産(オーパーツ)」的な存在の可能性も高いです。
「天(アメ)」は高天原、「尾羽(オハ)」は刃が広く鋭いこと、「張(バリ)」はピンと張り詰めていることを意味し、「天の、鋭く張り詰めた広刃の剣」という名を持っています。
天之尾羽張(アメノオハバリ)は天沼矛と対になる「破壊の剣」


天之尾羽張(アメノオハバリ)と天沼矛(アメノヌボコ)は、イザナギとイザナミに与えられた「創造と破壊」のセット装備のようなものです。
- 天之尾羽張(アメノオハバリ)
敵を斬る(殺す)ための道具 - 天沼矛(アメノヌボコ)
国を作る(生み出す)ための道具
天沼矛(アメノヌボコ)が「天つ神諸(もろもろ)の命(みこと)」によって授けられたのと同様に、天之尾羽張(アメノオハバリ)も別天津神(ことあまつかみ)たちが、「もしもの時の武力」としてイザナギに持たせた高天原由来の神剣と言えるでしょう。
「十拳剣」は1本ではない


天之尾羽張(アメノオハバリ)は神話で「十拳剣(とつかのつるぎ)」とも呼ばれますが、 実は「十拳剣」とは特定の1本の名前ではなく、サイズの名称(一般名詞)です。
「十拳剣」とは、「拳(こぶし)10個分の長さがある剣」という意味で、当時の「長剣」全般を指す言葉です。



そのため、日本神話には「別の十拳剣」がいくつか登場します
息子で大蛇退治で有名なスサノオの剣も十拳剣でした
よく混同される以下の剣は、すべて「種類は同じ(十拳剣)だが、別の剣」と考えられます。
| 所有者 | 使われた場面 | 剣の名前(真名) |
|---|---|---|
| イザナギ | カグツチ(火の神)を斬った | 天之尾羽張(アメノオハバリ) |
| スサノオ | アマテラスと誓約した (噛み砕かれて消滅) | (名称不明の十拳剣) |
| スサノオ | ヤマタノオロチを斬った | 天羽々斬(アメノハバキリ) |
固有名詞として「これが十拳剣だ」と最初に明確に描写されたのは、天之尾羽張(アメノオハバリ)です。



いわば、天之尾羽張(アメノオハバリ)はすべての十拳剣の元祖・オリジンのような存在なのです
天之尾羽張(アメノオハバリ)の能力


天之尾羽張(アメノオハバリ)は、神話上で初めて「神の命を奪った武器」として、凄まじい攻撃力を発揮しました。



「神産み」と「神殺し(子殺し)」の両面を持つ神剣として、伊都之尾羽張(イツノオハバリ)の別名を持っています
天之尾羽張(アメノオハバリ)の能力
神をも殺す「神殺し」の剣


MET LC-JIB110 004 crd.(1850年)
天之尾羽張(アメノオハバリ)の最大の能力は、不死に近い存在である神を一撃で葬り去る「神殺し」の力です。
イザナギが斬った相手は、触れるものすべてを焼き尽くす「火の神カグツチ」でしたが、天之尾羽張(アメノオハバリ)はその高熱に溶かされることなく、炎を切り裂いて本体の首を斬り落としました。
神話において「神が死ぬ(殺される)」という描写は極めて稀であり、天之尾羽張(アメノオハバリ)の異常な威力が際立っています。
血から多くの神を生み出した


武甕槌太神 Takemikazuchi by 八島岳亭 Yashima Gakutei.(19世紀)
天之尾羽張(アメノオハバリ)は、破壊と同時に強大な「生成能力」も持っていました。
カグツチを斬った際、剣の切っ先や根元から滴り落ちた血が岩や土につき、そこから次々と新しい神々が誕生しました。
その中には、最強の雷神タケミカヅチ(建御雷神)や、刀剣の神フツヌシ(経津主神)が含まれています。
つまり、天之尾羽張(アメノオハバリ)は最強の武神たちの「父親」でもあるのです。
天之尾羽張(アメノオハバリ)の所有者はイザナギ


Izanami and Izanagi create the 1st Japanese isles, Kobayashi Eitaku MFA 1880s.(1880年)
天之尾羽張(アメノオハバリ)の使い手は、国生みの父イザナギです。
イザナギは妻イザナミとの別れの原因を作った「火の神カグツチ」に対して、父親としての情ではなく妻を奪われた夫としての怒りを爆発させ、天之尾羽張(アメノオハバリ)を抜きました。
神話においてイザナギがこの剣を振るったのは一度きりですが、その一振りがあまりに強烈だったため、剣そのものが伝説となりました。
天之尾羽張(アメノオハバリ)にまつわる神話


天之尾羽張(アメノオハバリ)は、悲劇的な「神殺し」と、希望ある「武神の誕生」、重要な「国譲り」に関わっています。
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火の神カグツチの斬首と、武神の誕生


MET LC-JIB110 004 crd.(1850年)
イザナミが火の神カグツチを産んで火傷を負い、死んでしまった後のことです。
悲しみに暮れたイザナギは、枕元にいた赤ん坊のカグツチを見つめ「愛する妻の命を、子一人と引き換えにしてしまった」と嘆き、腰に差していた天之尾羽張(アメノオハバリ)を抜きました。
そして、我が子であるカグツチの首をはねました。
この時、天之尾羽張(アメノオハバリ)に付着した血が飛び散り、そこからタケミカヅチ(建御雷神)らが生まれました。


武甕槌太神 Takemikazuchi by 八島岳亭 Yashima Gakutei.(19世紀)
イザナギの怒りと武力が凝縮された剣から生まれたからこそ、タケミカヅチは「剣の切れ味と破壊力」を受け継いだ最強の武神となったのです。
国譲りでの「ご隠居」としてのアドバイスを行なった


時代は下り、アマテラスが地上のオオクニヌシに国を譲らせようとしていた時(国譲り)のこと。



地上(葦原中国)はスサノオの末裔である国津神が治めていましたが、アマテラスは「自分の子である天津神が治めるべきだ」と考えたのです
地上に誰を派遣しても失敗続きだったため、神々は「誰か適任者はいないか?」と思案しました。
すると、ある神が「天之尾羽張(アメノオハバリ)の神なら、この役目を果たせるでしょう」と提案。
しかし、この時すでに天之尾羽張は天の安河(あめのやすかわ)の水を塞き止めて道を塞ぎ、誰も近づけないような場所に隠居していました。
そこへ使者が恐る恐る会いに行くと、天之尾羽張(アメノオハバリ)はこう答えました。
「私は恐れ多い。代わりに、私の息子であるタケミカヅチを行かせましょう」
こうして剣の息子であるタケミカヅチが出撃し、見事に国譲りを成功させました。





タケミカヅチは持っていた布都御魂(フツノミタマ)を波の上に逆さまに突き立てて剣の切っ先の上にあぐらをかいて座り、オオクニヌシを威圧したと言われています
日本神話の中で天之尾羽張(アメノオハバリ)は、自分自身が前線に出るのではなく、息子を送り出す「偉大な父(隠居した古強者)」として描かれています。
天之尾羽張(アメノオハバリ)が現代作品に与える影響


天之尾羽張(アメノオハバリ)は「最強の剣」かつ「武神の父」という設定から、RPGなどでは終盤の強力な武器として登場します。
- 『ペルソナ4』
物理属性スキル「イノセントタック」などを使う強力なペルソナとして登場
主人公の初期ペルソナ「イザナギ」に関連する存在として描かれる - 『ファイナルファンタジーシリーズ』
「アメノオハバリ」という名前の武器として登場
最強クラスの刀、あるいは伝説の武器として扱われることが多い - 『パズル&ドラゴンズ(パズドラ)』
「アメノオハバリ」の名を持つ装備やモンスターが登場し、高い攻撃力を持つキャラとして扱われている - 『ノラガミ』
作中に登場する神器の一つとして名前が引用されることがある



草薙の剣(天叢雲剣)の登場が圧倒的に多いので、天之尾羽張(アメノオハバリ)の登場は少なく、マニアックな武器とも言えます








