
| 名称 | アロンダイト |
|---|---|
| 神話体系 | アーサー王伝説 |
| 所有者 | ランスロット・デュ・ラック |
| 製作者 | 湖の乙女(妖精) |
| 形状 | 刀身に文字が刻まれた剣 |
| 主な能力 | 決して刃こぼれしない エクスカリバーの姉妹剣 |
アロンダイトはアーサー王伝説に出てくるランスロットの武器です。
アーサー王に仕える「円卓の騎士」の中で、最強の騎士として誰もが名を挙げるのが、「湖の騎士」ランスロットです。
彼が佩帯(はいたい)する愛剣アロンダイトは、聖剣エクスカリバーと同じく「湖の乙女」によって鍛えられました。
まい異世界の剣アロンダイトは、決して刃こぼれしない至高の名剣でした
しかしアロンダイトは英雄の栄光だけでなく、許されざる不義、仲間殺し、そして狂気という、ランスロットの人生の闇をも吸い込んだ「裏切りの剣」としても知られています。
最強の騎士が振るった、栄光と堕落の剣の物語を解説します。
アロンダイト誕生秘話


アロンダイトは、アーサー王のエクスカリバーと同じ場所、同じ製作者によって作られた「姉妹剣」とも言える存在です。
実はランスロットは幼い頃に両親を失い、湖の乙女(妖精ヴィヴィアン/ニムエ)に引き取られて湖の底の異界で育てられました。



ランスロットが「湖の騎士(Lancelot of the Lake)」と呼ばれるのはこのためです
ランスロットが成長して地上に出てアーサー王の円卓の騎士となる際、養母である湖の乙女から餞別(せんべつ)として授けられたのがアロンダイトでした。
アーサー王のエクスカリバーが「王権の象徴」なら、アロンダイトは「理想的な騎士道の象徴」として祝福されていました。
アロンダイトは邪悪な魔法や呪いを退け、正義のために振るわれる限り無敵の強さを誇る、まさに「聖なる守護の剣」だったのです。
ちなみに「アロンダイト」という名前は、中世の騎士道物語『ハンプトンのビーヴェス』に登場する剣の名前が由来とされる説が有力です。


Bevis fights Ascaparte.
ただし現代ではランスロットの剣の固有名詞として完全に定着しています。
エクスカリバー・ガラティーン・アロンダイトは三姉妹剣


ガウェインのガラティーン、アーサー王のエクスカリバー、ランスロットのアロンダイトは全て「湖の乙女(妖精)」によって鍛えられた、同じ起源を持つ「三姉妹の聖剣」です。
| 序列 | 剣の名前 | 所有者 | 属性イメージ | 運命 |
|---|---|---|---|---|
| 長女 | エクスカリバー | アーサー王 | 星 / 光 | 湖に返還された |
| 次女 | ガラティーン | ガウェイン | 太陽 / 炎 | 持ち主と共に散った |
| 三女 | アロンダイト | ランスロット | 月 / 水 | 魔剣となり埋葬された |



どれも湖の乙女から受け取ったと言われていますが、辿った運命は全く異なるのが特徴的ですね
アロンダイトの能力


神話や伝承におけるアロンダイトの能力は魔法のビームを放つことではなく、「物理的な頑丈さ」と「使い手の技量を極限まで活かす」点にあります。
アロンダイトの能力
- 決して刃こぼれしない
- 竜殺し(ドラゴンスレイヤー)
- 月の光のような輝き
アロンダイトは、エクスカリバーと同じく妖精の鍛冶による剣であるため、どれほど激しく打ち合っても刃こぼれせず、折れることもない「不滅の耐久力」を持っていました。
また、ランスロットは冒険の中でカラスの塔の火竜を倒したエピソードを持っています。
そのため、アロンダイトには「竜に対して特効を持つ」という属性が付与されていると解釈されることが多いです。



ほかにも、エクスカリバーが太陽の輝きなら、アロンダイトは「湖の水面」や「月の光」に例えられる静謐で青白い輝きを放っていたとされます
アロンダイトは無敗の勝利の聖剣だった


「不滅の耐久力」や「月の輝き」といった能力に加え、アロンダイトには凄まじい「戦績」があります。
ランスロットは数多くのトーナメントや決闘を行いましたが、アロンダイトを手にしているときには一度たりとも敗北しませんでした。
アロンダイトはどんな激しい戦いでも刃こぼれ一つせず、常に水面のように青白く輝き続けたのです。
この時期のランスロットとアロンダイトは、民衆にとって「アーサー王のエクスカリバーと並ぶ、ブリテンの希望の光」そのものだったのです。



アロンダイトがのちに、不倫相手の王妃の救出と「同胞殺し」によって魔剣となるなど、誰も考えていなかったのでしょうね
アロンダイトの刻印
姉妹剣であるエクスカリバーには「我を手に取れ」「我を捨てよ」という文字が両面に刻まれていたという伝説があります。


一方、アロンダイトの原典には、そうした刻印の記録は残されていません。
しかし、現代の創作(『Fate』シリーズなど)においては、その起源を強調するために「刀身に『妖精文字』が刻まれている」と設定されることが一般的です。
これは、アロンダイトが人間の鍛冶師によるものではなく、湖の底の異界で鍛え上げられた「人智を超えた宝具」であることの証明として描かれています。
そのため、アロンダイトの外観を描写する際は「青白い刀身に、読めない古代の文字(妖精文字)が刻まれている」とするのが、最も「らしい」表現と言えるでしょう。



神話には刻印はないが、現代のイメージでは『妖精の証』として文字がある、と考えられているのが現代のアロンダイト解釈です
アロンダイトの所有者はランスロット


Boys King Arthur – N. C. Wyeth – p278.(1922年)
アロンダイトの所有者はランスロット・デュ・ラックです。
ランスロットは「円卓の騎士」の筆頭であり、武勇、容姿、家柄すべてにおいて完璧な騎士でした。
しかし主君アーサー王の妻(王妃グィネヴィア)と許されざる恋に落ちてしまい、円卓の崩壊の引き金となります。



ランスロットは完璧超人ですが精神的に脆い部分があり、物語中で何度か発狂して森を彷徨っていました
アロンダイトにまつわる神話


アロンダイトにまつわる神話をまとめました。
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聖剣としてカラスの塔の火竜を倒した


Rackham Lancelot and Dragon.
アロンダイトの「聖剣」としての強さを証明する最大のエピソードがカラスの塔の火竜退治です。
ある時、ランスロットは「悲しみの城(Dolorous Gard)」と呼ばれる、邪悪な魔法にかかった城を解放する冒険に出ます。
城の近くの「カラスの塔」には、口から炎を吐く恐ろしいドラゴンが住み着いていました。
ランスロットはアロンダイトを抜き放ち、ドラゴンの炎をものともせず突撃。
アロンダイトの刃は、ドラゴンの硬い鱗を紙のように切り裂き、見事に怪物を討ち果たしました。
この功績により、呪われていた城は解放され「喜びの城(Joyous Gard)」と改名されました。



このエピソードから、アロンダイトには「竜殺し(対竜特攻)」の聖なる力が宿っているとされます
王妃の救出と「同胞殺し」によって魔剣となる


Sir Lancelot save Guinevere by Lancelot Speed.(1912年)
アロンダイトが「魔剣」のようなイメージで語られる最大の理由は、主君の妻グィネヴィアとの不倫と、仲間殺しの悲劇的なエピソードにあります。
ランスロットと王妃グィネヴィアの不倫が露見し、王妃は火刑に処されることになりました。
ランスロットは愛する人を救うため、刑場へアロンダイトを抜いて乱入します。
鬼神の如く暴れまわる彼は、処刑の警護に当たっていた円卓の騎士たちを次々と斬り殺しました。
その中には、ランスロットを慕っていたガレスとガヘリス(ガウェイン卿の弟たち)もいました。
彼らはかつての英雄ランスロットに敬意を表し、丸腰(非武装)で立っていましたが、逆上したランスロットは彼らをもアロンダイトで惨殺してしまったのです。



この事件により、円卓の騎士は分裂してしまいました
親友だったガウェインはランスロットを激しく憎むようになり、アーサー王軍とランスロット軍の戦争が始まります。
かつて正義と守護のために振るわれた聖剣アロンダイトは、この時より「友や主君に刃を向け、無実の騎士を殺めた魔剣」へと堕ちてしまいました。
騎士を辞めて出家し、アロンダイトは放棄された


姉妹剣であるエクスカリバーが王の死に際して湖の乙女へと「返還」されたのに対し、アロンダイトが湖に帰ることはありませんでした。
アーサー王の死後、自らの罪を悔いたランスロットは騎士を捨てて僧侶として余生を過ごしました。
かつて無双の強さを誇った魔剣も、主人が剣を置いたその日から二度と鞘から抜かれることはなかったと考えられます。
ランスロットの死後、アロンダイトはおそらく彼の遺体と共に居城の地下深くへ埋葬されたのでしょう。
中世の騎士の習慣として、愛用の武具は遺体と共に石棺に納められることがありました。
アロンダイトもまた、主人の遺体と共にかつての栄光と罪の記憶を抱いたまま、城の地下に埋葬された可能性が高いです。



エクスカリバーが「借り物(王権の契約)」であったのに対し、アロンダイトはあくまで「ランスロットへの贈り物(個人の所有物)」だったため湖に返す義務がなく、ともに埋葬されたとも考察できます
湖の乙女のもとへ帰った「光の剣(エクスカリバー)」と、主人の罪を背負って土の下で朽ちていった「闇の剣(アロンダイト)」。
対照的な二振りの剣の運命は、アーサー王伝説の光と影を象徴しています。
アロンダイトが現代作品に与える影響


現代におけるアロンダイトの知名度とイメージは、ほぼ『Fate/Zero』によって決定づけられたと言えます。
『Fate/Zero』では、アロンダイトは狂化したランスロットの宝具「無毀なる湖光(アロンダイト)」として登場。
普段は黒い霧で隠されていますが、真名を開放すると封印が解け、輝きを取り戻します。



「ステータス上昇」「ドラゴンスレイヤー」「刃こぼれしない」という設定は、神話の要素を見事に現代風に解釈したものです
『Fate/Zero』のイメージによって、「アロンダイト=闇堕ちした聖騎士の剣」「黒騎士の武器」というダークなイメージが定着し、他のゲームでも「魔剣」「闇属性」として扱われることが多くなりました。








