
| 名称 | カルンウェナン |
|---|---|
| 神話体系 | アーサー王伝説 |
| 所有者 | アーサー王 (アーサー・ペンドラゴン) |
| 製作者 | 不明 |
| 形状 | 柄の部分が白く美しい装飾の短剣 |
| 主な能力 | 持ち主の姿を消す 影に潜む |
カルンウェナンはアーサー王伝説に出てくるアーサー王の武器です。
ウェールズ語で「白い柄」を意味するカルンウェナンは、持ち手を影に隠し、闇に紛れて敵を討つための「隠密兵装」でした。
光の王が密かに懐に忍ばせていた、アーサー王伝説の「影」の武器について解説します。
カルンウェナン誕生秘話


カルンウェナンはアーサー王伝説に登場する武器です。
製作者は不明ですが、異界の宝や神代から伝わる短剣とも考察されています。



神話の中でカルンウェナンは、気がつけばアーサー王の腰にあって窮地を救ってきたと言われています
ウェールズの神話体系において、アーサー王は船プリドゥエンによって異界(アンヌヴン)へ遠征し、数々の魔法の宝を持ち帰っています。
カルンウェナンも人間の手が及ばない「異界」で鍛えられた魔法の短剣だったのかもしれません。
もしくは、ウェールズ神話の鍛冶の神「ゴヴァンノン(Gofannon)」による作品の可能性もあります。



アーサー王の剣カレドヴルフ(エクスカリバーの原型)や槍ロンゴミニアドも、神話的解釈ではゴヴァンノンの作とされることがあります
「光の聖剣エクスカリバー」が王の権利として公に示されるものだとすれば、「影の短剣カルンウェナン」は王が誰にも言わずに懐に隠し持っていた、秘密の切り札だったのかもしれません。
カルンウェナンの能力


カルンウェナンの能力は、正々堂々とした騎士の戦いとは真逆の「暗殺者(アサシン)」のような性質を持っています。
カルンウェナンには魔法の力が宿っており、「持ち主を影で覆い、姿を見えなくする」という能力がありました。
これによりアーサー王は敵に気づかれることなく接近したり、危険な場所から脱出したりすることができました。
古いウェールズ伝承におけるアーサーは、きらびやかな城に住む王というよりも仲間と共に怪物を狩る「冒険者(モンスターハンター)」に近い存在でした。



魔女や巨人と戦うためには剣技だけでなく、カルンウェナンの能力による「不意打ち」や「隠密行動」も必要だったのです
カルンウェナンはアーサー王の「三大兵装」のひとつだった


ウェールズの伝承(『キルフッフとオルウェン』など)において、アーサー王の装備は以下の3つがセットで語られます。
| 名前 | 分類 | 役割 | 能力 |
![]() ![]() カレドヴルフ (エクスカリバー) | 剣 | 攻撃・王権 | 圧倒的な光の火力 王の象徴 |
|---|---|---|---|
![]() ![]() ロンゴミニアド | 槍 | 騎乗・決戦 | リーチと貫通力 息子を討った |
![]() ![]() カルンウェナン | 短剣 | 隠密・奇襲 | 姿を消す魔法 魔女を狩る |



つまりカルンウェナンは短剣でありながら、王を構成する「三種の神器」の一つだったのです
「光」のエクスカリバーと、「影」のカルンウェナン。
両方を持っていたからこそ、アーサー王は清廉潔白なだけでなく、現実的な脅威にも対処できる「最強の王」であり続けられたのかもしれません。
カルンウェナンの所有者はアーサー王


Charles Ernest Butler – King Arthur.(1903年)
カルンウェナンの所有者はアーサー王です。
アーサー王の名前は「アーサー・ペンドラゴン」で、ブリテンの王で円卓の騎士の主でした。
魔術師マーリンの導きにより選定の剣(カリバーン)を抜いて王となり、最強の聖剣(エクスカリバー)を振るってブリテン統一を成し遂げた英雄です。
普段は腰にエクスカリバーを帯びていましたが、懐やブーツには常にカルンウェナンを隠し持っていました。



光の聖剣が使えない状況や、隠密作戦において切り札として使用したと言われています
アーサー王は「円卓の騎士」と呼ばれる最強の騎士団を率い、ロマンと悲劇に満ちた生涯を送りました。
アーサーの出自
アーサーの父はブリテンの王ウーサー・ペンドラゴンですが、母は部下であるコーンウォール公の妻、イグレインでした。
ウーサー王は人妻であるイグレインに激しく恋をしてしまい、は魔術師マーリンに頼み込み、「一夜の逢瀬(おうせ)」の手引きをさせます。
マーリンは生まれた子供を貰い受けることを条件に、魔法でウーサーを「イグレインの夫(コーンウォール公)」の姿に変身させました。
夫が帰ってきたと思ったイグレインはウーサーと寝てしまい、この結果身ごもったのがアーサーでした。
ウーサーとイグレインは後に正式に再婚しますが、生まれたばかりのアーサーは約束通りマーリンに引き渡されました。


331 The Romance of King Arthur.(1917年)
マーリンは、赤ん坊を忠実な騎士エクター卿に預け、「自分の息子として育てるように」と命じました。
これによりアーサーは自分が王の子であることを知らず、エクター卿の息子(ケイの義弟)として一介の騎士見習いとして育つことになったのです。
アーサー王は実在した?


Arth tapestry2.(1385年)
「アーサー王は本当にいたのですか?」という疑問は、古くから議論されています。
現在の歴史学的な結論は、「モデルになった人物はいるが、魔法を使う伝説の王そのものはフィクション」とされています。
中世の物語に登場するような「輝くプレートアーマーを着て、魔法の剣を持ち、キャメロット城に住んでいた王」は、後世の詩人たちが創作したフィクションです。
アーサー王伝説のベースになったのは、5世紀〜6世紀頃(ローマ帝国が去った後のブリテン島)に、侵略者であるサクソン人と戦った「実在の軍事指導者」だと考えられています。
彼は「王(King)」ではなく、「将軍」や「隊長」に近い存在だったようですが、その英雄的な活躍が数百年かけて語り継がれるうちに、尾ひれがついて「伝説の騎士王」へと変化していったようです。
カルンウェナンにまつわる神話


カルンウェナンの恐ろしさが発揮された最も有名なエピソードは、「魔女オルドゥ(Orddu)」との戦いです。
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魔女オルドゥ殺し


アーサー王は、ブリテン北部に住む邪悪な魔女オルドゥ(意味:真っ黒な女)を退治しに向かいました。
オルドゥは強力な魔法を使うので部下たちが歯が立たたず、終盤ではアーサー王自身が突入することに。
正面から近づくのは危険な相手だったので、アーサー王はカルンウェナンの能力を使って自らの姿を消します。
闇に紛れて音もなく魔女の洞窟に侵入したアーサーは、魔女が気づくよりも早く背後から忍び寄り、カルンウェナンの一撃で魔女を真っ二つに切り裂きました。
「白い柄」の短剣が、「真っ黒な」魔女を討つ。
このエピソードは、アーサー王が単なる武力だけでなく、知恵と魔法のアイテムを使いこなす英雄であったことを示しています。
カルンウェナンの活躍は一度だけ?


実は、神話の原典の中で「カルンウェナン」という名前が出てくる戦闘シーンは、ウェールズの物語『キルフッフとオルウェン』における「魔女オルドゥ退治」のたった一回だけです。
別の伝説(モン・サン・ミシェルの巨人退治など)でも、アーサー王が「短剣」で巨人にトドメを刺すシーンはありますが、そこでは武器の名前は語られていません。
しかし、アーサー王が肌身離さず持っていた短剣といえばカルンウェナンです。



名前こそ呼ばれませんでしたが、巨人を倒した短剣も姿を変えたカルンウェナンだったのかもしれません
カルンウェナンが現代作品に与える影響


カルンウェナンは『Fate』シリーズによって近年知名度が急上昇しました。
『Fate/Grand Order』では、アルトリア・キャスターが「選定の杖」を基にした魔術の触媒として使用。
Bond Lv.5のプロフィールで「影踏みのカルンウェナン」として明記され、他の宝剣(稲妻のスピュメイダー、神話礼装マルミアドワーズ)と並んで登場します。
宝具ではなく、魔術触媒として機能するのが特徴です。
アルトリア・キャスターの戦闘で活用され、スキル3のセリフ「早駆けですよ、カルンウェナン」やExtra Attack 2の「カルンウェナン! 砕け散りなさい!」で呼び出されます。



「姿を消す」という神話の能力は、ゲーム内では持ち主に陰に潜む能力を与えるとされています










