
| 名称 | クラウ・ソラス |
|---|---|
| 神話体系 | ケルト神話 |
| 所有者 | ヌアザ |
| 製作者 | 不明 |
| 形状 | 刀身が松明のように輝く剣 |
| 主な能力 | 抜けば誰も逃げられない(必中・必殺) |
クラウ・ソラスはケルト神話に出てくるダーナ神族の王ヌアザの武器です。
まいクラウ・ソラスは光り輝く刀身を持ち、必中・必殺の神の剣だったと言われています
ファンタジーRPGで最強の武器といえば「光の剣」ですが、元ネタをご存知でしょうか?
実はケルト神話の主神、ヌアザが持つ至宝クラウ・ソラスがそうだと言われています。
アイルランド語で文字通り「光の剣」を意味するクラウ・ソラスは、ひとたび鞘から抜かれれば「何者も逃れることはできず、いかなる盾も防げない」という絶対的な勝利を約束された、神の王権の象徴でした。
以下でクラウ・ソラスについて詳しく解説していきます。
クラウ・ソラス誕生秘話


クラウ・ソラスはケルト神話に登場する武器です。
製作者は神話では明らかにされておらず、神々がアイルランドにやってくる前に住んでいた北方の都フィンディアスからもたらされたと言われています。



クラウ・ソラスは北方の四つの都市の四至宝の一つで、神々の力の源とされます
北方の四つの都市の四至宝
| 都市名 | 至宝 | 備考 |
|---|---|---|
| フェリアス | リア・ファイル | 即位する王が叫ぶ石 |
| ゴリアス | ブリューナク | 光の神ルーの槍 |
| ムリアス | ダグザの大釜 | 食糧が尽きない釜 |
| フィンディアス | クラウ・ソラス | ヌアザの剣 |
ダーナ神族はアイルランドに来る前は北方の島々で魔術を学んでおり、クラウ・ソラスは魔術都市の一つであるフィンディアスから持ち込まれました。
クラウ・ソラスは単なる武器ではなく、「神族の正当な王」だけが持つことを許されたレガリア(王権の象徴)なのです。
クラウ・ソラスの能力


クラウ・ソラスの能力は必中と必殺という、シンプルにして最強の力です。
ケルト神話には以下のように記されています。
「ひとたび鞘から抜かれれば、何人もそこから逃れることはできず、何人もこれに抵抗することはできない」
つまり、「必中(必ず当たる)」と「防御貫通(盾で防げない)」の両方を備えた不敗の剣であることを意味します。
またクラウ・ソラスは「(自ら発光して)光る剣」という名の通り、夜でも松明のように輝いて敵を威圧しました。



カラドボルグも光り輝く剣なので、どちらもアーサー王伝説のモデルの剣とされています
クラウ・ソラスは白熱する黄金装飾の剣だった?


神話の原典にはクラウ・ソラスの詳細なデザインは残されていません。
しかし数少ない記述と時代背景から、クラウ・ソラスは「白熱する黄金装飾の剣」だったのではないかと予想できます。
クラウ・ソラスの最大の特徴は刀身そのものが放つ強烈な光です。
反射ではなく、松明のように夜の戦場を照らすと言われるほどの熱量を持った輝きだったと伝えられています。
またケルト神話において王の剣は「黄金の柄」「銀の装飾」であることが通例です。



所有者であるヌアザはダーナ神族の王ですので、ヌアザの剣(クラウ・ソラス)も黄金と銀で装飾された豪華な剣であったと考えられます
さらにクラウ・ソラスはヌアザがアイルランドに渡る前の古代ケルト時代から持っていた剣であることから、形状は古代ケルト特有のリーフブレード(葉のような形状)ではないかと考察できます。
詳細なデザインは不明ですが、クラウ・ソラスはおそらく優美で神秘的なシルエットの輝く豪華な剣だったのでしょう。
クラウ・ソラスの所有者はヌアザ


Nuadanua.(1916年)
クラウ・ソラスの所有者はダーナ神族の初代の王ヌアザです。
ヌアザはアイルランドの先住民フィル・ボルグ族との戦いに勝利したものの右腕を失い、銀の義手をつけていたと言われてます。



銀の義手をつけていたので「銀の腕のヌアザ」と呼ばれていました
ヌアザは公平で高潔な王でしたが、フォモール族との戦いで邪眼のバロール(あるいはその部下)によって倒されてしまいました。
ちなみにクラウ・ソラスはその後どうなったのか、明確に神話には記載されていません。
フォモール族との戦い(第二次マグ・トゥレドの戦い)
アイルランドに侵攻し、先住民フィル・ボルグ族との戦いに勝利したヌアザは右腕を失ってしまったため、王位を退きます。
ケルトの掟において肉体が欠損することは王権の喪失を意味したため、王位は七年の間先住の巨人族フォモール族を父にもつブレスが継ぐことになりました。
しかしブレスは暴君で、ヌアザは王位を奪還するために医神ディアン・ケヒト作の銀造りの義手を得て力を回復します。
さらに、ディアン・ケヒトの息子ミアハによって血と肉でできた完璧な義手を手に入れて王座を奪還しました。
ところがブレスがフォモール族に助けを求めたので、ダーナ神族とフォモール族による戦いが始まります。
ダーナ神族は苦戦を強いられ、ヌアザは邪眼のバロールによって倒されてしまいます。
しかしダーナ神族とフォモール族の混血である光の神ルーの働きによって邪眼のバロールは倒され、ダーナ神族が勝利を収めました。





ルーはフラガラッハの持ち主として有名ですが、実は邪眼のバロールの孫でした
バロールは孫に倒されるという予言を受けており、実際に孫のルーによって倒されたのでした
クラウ・ソラスにまつわる神話


Ireland-stamp-1922-sword-of-light-5p.
クラウ・ソラスにまつわる神話をまとめました。
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アイルランド上陸の際に先住民を恐怖させた


ダーナ神族がアイルランドに侵攻した際、神々は乗ってきた船を焼き払い、黒煙と霧に紛れて現れたと言われています。
先頭に立っていたのはダーナ神族の王ヌアザで、その手には眩いほど光り輝くクラウ・ソラスがありました。
黒煙を背に神の剣を持って現れたヌアザの姿に、先住民族のフィル・ボルグ族は恐怖したそうです。



まさにクラウ・ソラスが「王の象徴」として人々に恐れられていた、ということがわかる神話です
クロム・クルアハの偶像破壊の伝承


St. Patrick and Crom Cruaich.(1907年)
キリスト教化語の伝承では、アイルランドの守護聖人パトリックが、邪神クロム・クルアハの偶像を破壊する際にクラウ・ソラスを使用した、という伝説があります。
この伝承によって「かつての異教の神(ヌアザ)の剣が、聖人の手によって邪神を討つ」という形で、聖剣クラウ・ソラスとしてのイメージが広がりました。
クラウ・ソラスが現代作品に与える影響


クラウ・ソラスは現代RPGにおける「勇者の剣」の概念そのものを作ったと言っても過言ではありません。
- ドラゴンクエストシリーズ
「ロトのつるぎ」「ひかりのつるぎ」の元ネタの可能性大 - ファイナルファンタジーシリーズ
「クラウソラス」という名で聖属性の剣として登場 - Fateシリーズ
ヌアザとセットで登場し、エクスカリバーの光のイメージの源流でもある



クラウ・ソラスの「悪を払う聖なる光の剣」のイメージはドラゴンクエストからの影響が大きいです
クラウ・ソラスは神の剣であったことや、邪神を討ったことで現代作品でも聖剣として広く愛される剣なのです。








