
| 名称 | クラレント |
|---|---|
| 神話体系 | アーサー王伝説 |
| 所有者 | アーサー王 モードレッド |
| 製作者 | 不明 |
| 形状 | 黄金や宝石で豪華絢爛に装飾されていた 刀身には一点の曇りも傷もなく、鏡のように研ぎ澄まされていた |
| 主な能力 | 王の威厳を示す 「平和」と「公平」の象徴 エクスカリバーにも劣らぬ切れ味 |
クラレントはアーサー王伝説に出てくるモードレッドの武器です。
まいモードレッドはアーサー王伝説の悪役で、アーサー王の息子(または甥)だったと言われています
アーサー王伝説の最後、「カムランの戦い」において、王に致命傷を与えた武器をご存知でしょうか?
それは敵国の武器でも、怪物の爪でもなく、かつてアーサー王の宝物庫に大切に保管されていた、「平和の象徴」である剣クラレントだったのです。
アーサー王の息子であり、円卓の騎士の反逆者モードレッドが王位を簒奪(さんだつ)した際、なぜエクスカリバーではなくこの剣を選んだのか?
そして、聖なる剣はいかにして「王殺しの魔剣」へと変貌したのか。
アーサー王伝説の悲劇的なフィナーレを彩る、最後の剣の物語を解説します。
クラレント誕生秘話


クラレントはアーサー王伝説に登場する剣です。



制作者や制作時期は不明ですが、「過去の時代の、最高レベルの人間の鍛冶師」によって打たれた名剣と考えられます
クラレントはおそらくは父王ウーサー・ペンドラゴンの時代、あるいはそれ以上前からペンドラゴン家に伝わる「王家の家宝(レガリア)」だったのでしょう。
クラレントはアーサー王が戦いで使う武器ではなく、式典や騎士の叙任式で使う「儀礼用の剣(Sword of Peace)」でした。
平和と公平の象徴であるクラレントは、鉄壁の守りを誇る「ウォリングフォード城」の宝物庫に厳重に保管されており、血なまぐさい戦場に出ることはありませんでした。
クラレントは「かつての平和だった時代の遺産」あるいは「王としての正当性を示すための、古い権威ある剣」として大切に扱われていたのです。
クラレントの能力


神話におけるクラレントの能力は、魔法的な派手さではなく「王を殺した」という事実そのものです。
クラレントは「平和」と「公平」の象徴として儀礼用の宝物として「ウォリングフォード城」の宝物庫に保管されていました。



ペンドラゴン家に代々伝わる宝剣であり、王の威厳を示す聖剣でした
とはいえ、王の剣として最高級の素材で作られていたため、エクスカリバーにも劣らぬ切れ味を持っていました。
クラレントは戦場を知らない美しき剣だった
常にアーサー王の腰にあって戦場の血を吸ってきたエクスカリバーとは対照的に、クラレントは「箱入り娘」のような剣でした。
クラレントの外観は王の威厳を示すために黄金や宝石で豪華絢爛に飾られており、実用性よりも「美しさ」を重視した美術品のような輝きを放ってたと言われています。
刀身は一度も敵を斬ったことがなく鏡のように無垢で、まさに「平和の象徴」そのものでした。
しかし、この美しさが残酷な皮肉を生みました。
一度も血を吸ったことのなかった清廉な剣が最初で最後に斬り裂いた相手が、あろうことか持ち主である「アーサー王」だったのです。
最も美しく飾られた剣が、最も醜い裏切りに使われたという、「見た目と役割のギャップ」こそがクラレントという魔剣の恐ろしさです。
クラレントの所有者はモードレッド


Sir Mordred by H. J. Ford, from King Arthur- The Tales of the Round Table by Andrew Lang, 1902.
クラレントはもともとアーサー王のものでしたが、息子であるモードレッドが強奪して使用しました。
モードレッドは「反逆の騎士」と呼ばれ、アーサー王と異父姉モルガンの間に生まれた不義の子(近親相姦の子)と言われています。
自分が不浄な存在であることを知り、父アーサー王に対して激しい憎悪と執着を抱いていました。
モードレッドがクラレントを選んだのは、単に強力な武器だったからか、それとも「父が大切にしていた平和」を汚すためだったのか、解釈が分かれるところです。



「妖精から貰ったポッと出の剣(エクスカリバー)より、代々の王が持っていたクラレントのほうが、正統な後継者である証明になる!」と考えたのかもしれませんね
クラレントにまつわる神話


クラレントにまつわる神話をまとめました。
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平和の象徴として厳重に保管されていた


カムランの悲劇が起きる前、クラレントは「平和の剣(Sword of Peace)」として、キャメロットの栄光を支えていました。
アーサー王は戦場では聖剣エクスカリバーを振るいましたが、城内での式典や祭事においてはクラレントを帯びて玉座に座ったと言われています。
とくに重要な役割が、若き戦士を円卓の騎士へと任命する「叙任式(じょにんしき)」です。
王は跪(ひざまず)く若者の肩にクラレントの平らな面を当て、騎士としての誓いを立てさせました。
つまり多くの円卓の騎士たちにとってクラレントは「自分を騎士にしてくれた、憧れの剣」であり、新たな英雄を生み出す「希望の象徴」だったのです。



このクラレントが、将来騎士たちの主君を殺すことになるとは誰も想像すらしていなかったでしょう
アーサー王の留守中に強奪された
平和の剣として厳重の保管されていたクラレントは、アーサー王の留守中にモードレッドによって強奪されます。
アーサー王はランスロットを討伐するためにフランスへ遠征に出ることに。
王は留守中の国政と王妃グィネヴィアの身、そして国の宝の管理を息子であるモードレッドに託しました。
この時、クラレントは鉄壁の防御を誇る「ウォリングフォード城」の宝物庫に厳重に保管されていました。



しかし、モードレッドは父の信頼を裏切ります
モードレッドは「アーサー王は戦死した」という嘘の情報を流して民衆を扇動し、自らが新たな王になると宣言しました。
そして、王としての正統性をアピールするためにウォリングフォードの宝物庫を開き、王権の象徴であるクラレントを強奪したのです。
平和を守るために封印されていた剣が、平和を乱す反逆者の手に渡った瞬間でした。
カムランの戦いでアーサー王に一撃を与えた


Boys King Arthur – N. C. Wyeth – p306.(1922年)
クラレントはアーサー王伝説の最後を飾る「カムランの戦い」で魔剣となりました。
フランスから急いで戻ったアーサー王軍と、反逆者モードレッド軍が激突し「カムランの戦い」が勃発します。
凄惨な殺し合いの末、戦場に立っているのはアーサー王とモードレッドだけとなりました。
アーサー王は聖槍ロンゴミニアドを構えて突撃し、モードレッドの胴体を深々と貫きます。
勝負は決したかに見えましたが、槍で串刺しにされたモードレッドは死に物狂いの執念で槍を自分の体ごと押し込み、アーサー王との間合いを詰めました。
モードレッドは血を吐きながら、渾身の力でかつて父アーサー王が大切にしていたクラレントを振り下ろします。
儀礼用とはいえ最高の名剣であったクラレントは、アーサー王の頑丈な兜を叩き割り、頭蓋骨まで達する致命傷を与えました。
皮肉にも、アーサー王は「自らが平和の象徴として大切にしていた剣」によって、その生涯を閉じることになったのです。
クラレントが現代作品に与える影響


クラレントは『Fate』シリーズによって強烈なキャラクター付けがなされました。
『Fate/Apocalypse』『FGO』では、モードレッドの宝具「我が麗しき父への叛逆(クラレント・ブラッド・アーサー)」として登場。
普段は「不貞隠しの兜」で隠されていますが、真名解放すると増幅された憎悪が「赤い雷」となって放出されます。
「本来は白銀に輝く聖剣だが、アーサー王の血を浴びて赤く染まった」という設定は、神話の悲劇性を視覚的に表現した見事なアレンジです。



神話ではあまり登場がないクラレントですが、『Fate』シリーズによって悲劇の魔剣として有名になりました
アーサー王の生涯を彩った4つの武器


アーサー王伝説は、武器に始まり武器に終わる物語です。



主要な4つの武器の役割を整理すると、アーサー王という英雄の興亡が見えてきます
| 武器名 | 伝説での役割 | 象徴 | 運命 |
![]() ![]() カリバーン | 始まり | 若さと未熟 | 王としての成長のために 折れた |
|---|---|---|---|
![]() ![]() エクスカリバー | 全盛期 | 王権と守護 | 役目を終え、 湖へ美しく返還された |
![]() ![]() ロンゴミニアド | 決着 | 意思と貫通 | 最後の戦いで 盾ごと息子を貫いた |
![]() ![]() クラレント | 終焉 | 平和と裏切り | 息子によって王を殺した |
始まりの剣(カリバーン)が折れ、最強の剣(エクスカリバー)が国を守り、最後は平和の剣(クラレント)によって王が倒れる。
この皮肉でドラマチックな武器の変遷こそが、アーサー王伝説が今なお愛される理由なのかもしれません。











