
| 名称 | エクスカリバー | カリバーン |
|---|---|---|
| 神話体系 | アーサー王伝説 | アーサー王伝説 |
| 所有者 | アーサー王 (アーサー・ペンドラゴン) | アーサー王 (アーサー・ペンドラゴン) |
| 製作者 | 湖の乙女(妖精) | 不明 |
| 形状 | 30本の松明のように発光する ヒヤシンス石や黄金の蛇の彫刻 刀身に「我を取れ/捨てよ」の文字 | 頑丈だが、使い手次第で折れる 王位を示す豪華な装飾 |
| 主な能力 | 真の聖剣 鉄を木のように斬る 鞘を持つものは血を流さない | 選定の剣 王たる資質を持つものだけが抜ける |
エクスカリバー/カリバーンはアーサー王伝説に出てくるアーサー王の武器です。
まいファンタジー作品において「最強の聖剣」の代名詞として語られるエクスカリバーですが、実は「石に刺さっていた剣」ではないことをご存知でしょうか?
多くの人が混同している「選定の剣(カリバーン)」と「真の聖剣(エクスカリバー)」の違い。
そして、剣本体よりも価値があるとされた「魔法の鞘(さや)」の能力とは?
ケルト神話の魔剣カラドボルグを源流に持ち、騎士道物語の頂点に君臨する聖剣の伝説を紐解きます。
【比較表】一目でわかるエクスカリバー/カリバーンの違い


エクスカリバー/カリバーンの違いを一覧表でまとめました。
| 名称 | エクスカリバー | カリバーン |
|---|---|---|
| 神話体系 | アーサー王伝説 | アーサー王伝説 |
| 所有者 | アーサー王 (アーサー・ペンドラゴン) | アーサー王 (アーサー・ペンドラゴン) |
| 製作者 | 湖の乙女(妖精) | 不明 |
| 入手場所 | 神秘の湖 | 教会の前の石(鉄床) |
| 入手条件 | 湖の乙女から授けられる | 王の資質を持つ者が引き抜く |
| 形状 | 30本の松明のように発光する ヒヤシンス石や黄金の蛇の彫刻 刀身に「我を取れ/捨てよ」の文字 | 頑丈だが、使い手次第で折れる 王位を示す豪華な装飾 |
| 主な能力 | 真の聖剣 鉄を木のように斬る 鞘を持つものは血を流さない | 選定の剣 王たる資質を持つものだけが抜ける |
実はアーサー王は生涯で2本の特別な剣を所有していました。
「石から抜いて王になり(カリバーン)、それが折れた後に湖から授かった(エクスカリバー)」というのが正しい順序です。
エクスカリバー・ガラティーン・アロンダイトは三姉妹剣


ガウェインのガラティーン、アーサー王のエクスカリバー、ランスロットのアロンダイトは全て「湖の乙女(妖精)」によって鍛えられた、同じ起源を持つ「三姉妹の聖剣」です。
| 序列 | 剣の名前 | 所有者 | 属性イメージ | 運命 |
|---|---|---|---|---|
| 長女 | エクスカリバー | アーサー王 | 星 / 光 | 湖に返還された |
| 次女 | ガラティーン | ガウェイン | 太陽 / 炎 | 持ち主と共に散った |
| 三女 | アロンダイト | ランスロット | 月 / 水 | 魔剣となり埋葬された |



どれも湖の乙女から受け取ったと言われていますが、辿った運命は全く異なるのが特徴的ですね
エクスカリバーの元ネタは「カラドボルグ」?


実は「エクスカリバー」という名前は、ケルト神話に登場する魔剣「カラドボルグ(Caladbolg)」が語源であるという説が有力です。
名前の進化
- アイルランド語の「カラドボルグ(硬い雷)」
- →ウェールズ語で「カレドヴールフ」
- →ラテン語の「カリバーン」
- →フランス語の「エクスカリバー」



物語が国や言語を越えるときに、なまりなどで変化していったと言語学的に推測されています
共通する特徴
- 光り輝く
- 王の剣である
- 雷のような一撃
海を渡ったケルトの伝説の剣カラドボルグ(Caladbolg)が、中世ヨーロッパの騎士道物語として生まれ変わった姿こそがエクスカリバーなのです。
エクスカリバー/カリバーンの能力


エクスカリバー/カリバーンの能力をまとめました。
エクスカリバーの能力:王を守護する最強の武具


選定の剣カリバーンを失ったアーサーが、魔術師マーリンの導きで湖の乙女から授かったのがエクスカリバーです。
エクスカリバーは純粋な「戦闘用」として、桁外れの性能を持っています。
- 30本の松明の閃光
- 鉄を断つ切れ味
- 鞘による「不死」の加護
エクスカリバーを鞘から抜き放つと、刀身から「30本の松明(たいまつ)」に匹敵するほどの強烈な光が放たれました。
この輝きだけで敵軍はひるんで目をくらませられ、戦意を喪失したと伝えられています。



これはケルト神話の「クラウ・ソラス(光の剣)」の性質を色濃く受け継いでいます
エクスカリバーは切れ味も凄まじく、敵の鎖帷子(チェーンメイル)や鉄の盾をまるで木材か何かのように容易く両断したとされます。
物理的な破壊力において、エクスカリバーは並ぶものなき最強の剣です。
しかし実はエクスカリバーの真価は剣そのものではなく、セットになっていた「魔法の鞘(さや)」にありました。
この鞘を腰に帯びている限り、持ち主は「どんな傷を受けても一滴も血を流さない(出血多量で死なない)」という、実質的な不死身の加護を得ることができました。



魔術師マーリンは「剣よりも鞘の方が10倍価値がある」と断言したと言われています
アーサー王の伝説は脆く折れやすい「カリバーン」から、光と不死身の加護を持つ「エクスカリバー」へと剣を持ち替えることで、一人の少年が真の王へと成長していく過程を描いているのです。
カリバーンの能力:王の資格を問う剣


カリバーンの能力は「正統性の証明」です。
カリバーンの最大の能力は、攻撃力ではなく「選定機能」にあります。
「王の資格を持つ者以外には決して抜けない」という強力な魔法がかけられており、カリバーンを引き抜くこと自体が、アーサーがブリテンの正統な王であるという「証明書」の役割を果たしました。



ただし弱点として「未熟な使い手には折れる」点が挙げられます
カリバーンは強力な剣でしたが、「絶対的な強度」はありませんでした。
アーサー王がペリノア王との決闘において騎士道精神を忘れ、怒りに任せて剣を振るったとき、カリバーンは王の未熟さに耐えきれずに無惨にも折れてしまいました。
これは「若きアーサー王の精神的な脆さ」を象徴する武器だったと言えます。
エクスカリバーとカリバーンのデザインの違い


エクスカリバーとカリバーンはデザインも違っています。
| 特徴 | 選定の剣 カリバーン | 真の聖剣 エクスカリバー |
|---|---|---|
| 印象 | 「権威」の象徴 | 「力」の象徴 |
| 刀身 | 頑丈だが、使い手次第で折れる | 30本の松明のように発光する |
| 柄・装飾 | 王位を示す豪華な装飾 | ヒヤシンス石や黄金の蛇の彫刻 |
| 刻印 | (石に文字が刻まれている) | 刀身に「我を取れ/捨てよ」の文字 |
| Fateでの解釈 | 装飾過多で美しいが、少し脆い | シンプルだが、神々しい光を放つ |
真の聖剣「エクスカリバー」の外観
- 人間業ではない輝き:「30本の松明(たいまつ)」のように激しく発光
- 柄の宝石(ヒヤシンス)
- 刀身の刻印(文字)
選定の剣「カリバーン」の外観
- 王の象徴としての豪華さ:儀式用に豪華絢爛な装飾
- 石に刺さる姿
- 現代のイメージ(Fateなど)
エクスカリバーは「妖精の作、閃光、刻印」、カリバーンは「王権、装飾、未熟」なのが特徴です。
とくにエクスカリバーの刀身の「我を手に取れ(Take me up)」「我を捨てよ(Cast me away)」の刻印は王としての宿命を表していたとされています。



アーサー王は湖の聖剣を手にして活躍しましたが、聖剣は代々受け継ぐことはできずいつか剣を湖に返さなければならないことを示していたのです
エクスカリバー/カリバーンの所有者はアーサー・ペンドラゴン


Charles Ernest Butler – King Arthur.(1903年)
エクスカリバーとカリバーンの所有者はアーサー王です。
アーサー王の名前は「アーサー・ペンドラゴン」で、ブリテンの王で円卓の騎士の主でした。
魔術師マーリンの導きにより選定の剣(カリバーン)を抜いて王となり、最強の聖剣(エクスカリバー)を振るってブリテン統一を成し遂げた英雄です。
「円卓の騎士」と呼ばれる最強の騎士団を率い、ロマンと悲劇に満ちた生涯を送りました。
アーサーの出自
アーサーの父はブリテンの王ウーサー・ペンドラゴンですが、母は部下であるコーンウォール公の妻、イグレインでした。
ウーサー王は人妻であるイグレインに激しく恋をしてしまい、は魔術師マーリンに頼み込み、「一夜の逢瀬(おうせ)」の手引きをさせます。
マーリンは生まれた子供を貰い受けることを条件に、魔法でウーサーを「イグレインの夫(コーンウォール公)」の姿に変身させました。
夫が帰ってきたと思ったイグレインはウーサーと寝てしまい、この結果身ごもったのがアーサーでした。
ウーサーとイグレインは後に正式に再婚しますが、生まれたばかりのアーサーは約束通りマーリンに引き渡されました。


331 The Romance of King Arthur.(1917年)
マーリンは、赤ん坊を忠実な騎士エクター卿に預け、「自分の息子として育てるように」と命じました。
これによりアーサーは自分が王の子であることを知らず、エクター卿の息子(ケイの義弟)として一介の騎士見習いとして育つことになったのです。
アーサー王は実在した?


Arth tapestry2.(1385年)
「アーサー王は本当にいたのですか?」という疑問は、古くから議論されています。
現在の歴史学的な結論は、「モデルになった人物はいるが、魔法を使う伝説の王そのものはフィクション」とされています。
中世の物語に登場するような「輝くプレートアーマーを着て、魔法の剣を持ち、キャメロット城に住んでいた王」は、後世の詩人たちが創作したフィクションです。
アーサー王伝説のベースになったのは、5世紀〜6世紀頃(ローマ帝国が去った後のブリテン島)に、侵略者であるサクソン人と戦った「実在の軍事指導者」だと考えられています。
彼は「王(King)」ではなく、「将軍」や「隊長」に近い存在だったようですが、その英雄的な活躍が数百年かけて語り継がれるうちに、尾ひれがついて「伝説の騎士王」へと変化していったようです。
エクスカリバー/カリバーンにまつわる神話


Stories King Arthur-073.
アーサー王の生涯は、2本の剣と共にありました。
1本は王としての運命を切り開いた「選定の剣カリバーン」、もう1本は王の命と王国を守り抜いた「最強の聖剣エクスカリバー」です。
ここでは、それぞれの剣が辿った数奇な運命と、エクスカリバー/カリバーンにまつわる神話を解説します。
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少年アーサーが岩から引き抜いたカリバーン


ExcaliburStone.(2006年)
ブリテンの王ウーサー・ペンドラゴンが亡くなり、国は後継者を巡って混乱の中にありました。
そんなある日、ロンドンの大聖堂の庭に剣が突き刺さった不思議な「石」と「鉄床」が出現します。
その石には金文字で以下のように刻まれていました。
「この剣を石から引き抜く者は、全イングランドの正当な王である」
名だたる騎士や諸侯たちがこぞって挑戦しましたが、剣はびくともしません。
当時、騎士エクター卿の養子として育てられていた少年アーサーは、義兄ケイの従者としてトーナメントに来ていました。
しかし、ケイが剣を宿屋に忘れてしまったため、アーサーは代わりの剣を探しに走ります。
アーサーは教会にあった「石に刺さった剣」を偶然見つけ、誰のものかも知らずに無心で手をかけると、剣はまるで氷から抜けるように滑らかに引き抜かれました。
この瞬間、名もなき少年はブリテンの正統なる王として認められたのです。



実はアーサーは自身すら知りませんでしたが、ブリテン王ウーサーの隠された子だったので、正当な継承者だったのです
アーサーの出自
アーサーの父はブリテンの王ウーサー・ペンドラゴンですが、母は部下であるコーンウォール公の妻、イグレインでした。
ウーサー王は人妻であるイグレインに激しく恋をしてしまい、は魔術師マーリンに頼み込み、「一夜の逢瀬(おうせ)」の手引きをさせます。
マーリンは生まれた子供を貰い受けることを条件に、魔法でウーサーを「イグレインの夫(コーンウォール公)」の姿に変身させました。
夫が帰ってきたと思ったイグレインはウーサーと寝てしまい、この結果身ごもったのがアーサーでした。
ウーサーとイグレインは後に正式に再婚しますが、生まれたばかりのアーサーは約束通りマーリンに引き渡されました。


331 The Romance of King Arthur.(1917年)
マーリンは、赤ん坊を忠実な騎士エクター卿に預け、「自分の息子として育てるように」と命じました。
これによりアーサーは自分が王の子であることを知らず、エクター卿の息子(ケイの義弟)として一介の騎士見習いとして育つことになったのです。
ペリノア王との決闘で折れたカリバーン
王となったアーサーは、カリバーンを携えてブリテン統一の戦いに乗り出します。
しかし、ある日ペリノア王という強力な騎士との決闘において、この剣は失われてしまいます。
ペリノア王の武勇は凄まじく、若いアーサー王は追い詰められたアーサーは騎士道精神に則った戦いではなく、剣の力に任せて強引な一撃を叩き込みました。
すると、王の未熟さや慢心に耐えきれなかったのか、カリバーンは刀身の半ばからポッキリと折れてしまったのです。
絶体絶命のアーサーでしたが、同行していた魔術師マーリンが魔法でペリノア王を眠らせたため、一命を取り留めました。
「王を選んだ剣」は、王が未熟さを露呈した瞬間にその役割を終えたのでした。
湖の乙女からエクスカリバーを授かる


Tales of the Round table; based on the tales in the Book of romance (1908) (14580333839).(1908年)
カリバーンを失い、心身ともに傷ついたアーサー王をマーリンはある静かな湖のほとりへと導きます。
霧が晴れると、湖の水面から「美しい白布(サマイト)をまとった女性の腕」が突き出しており、その手には神々しい光を放つ剣が握られていました。
マーリンは「あれこそがエクスカリバーだ」と告げます。
すると「湖の乙女」水面を歩いて現れ、アーサーが剣を所望すると「私の望みを一つ叶えてくれるなら差し上げましょう」と答えました。


CRANE King Arthur asks the lady of the lake for the sword Excalibur.(1911年)
アーサーはこれを承諾し、水面から突き出た腕に小舟で近づいて剣を受け取ります。
それは折れたカリバーンとは比べ物にならない魔力を秘めた、真の聖剣でした。
魔女モルガンによって魔法の鞘が盗難される


Queen Morgan le Fay took the scabbard.(1914年)
エクスカリバーには、剣本体以上に重要な付属品「魔法の鞘(さや)」がありました。
この鞘を腰に帯びている限り、持ち主は「どんな傷を受けても決して血を流さない(出血多量で死なない)」という不死身に近い加護を得られました。
しかしアーサー王の異父姉であり、彼を憎む魔女モルガン・ル・フェイがこの鞘を狙います。
モルガンはアーサー王に和解を申し出て近づき、彼が油断して眠っている隙に魔法の鞘を盗み出しました。
追っ手がかかると、モルガンは鞘を深い湖(一説には海)に投げ捨ててしまいます。
重い鞘はすぐに沈んでしまい、二度と戻ってくることはありませんでした。
これによりアーサー王は「不死身の肉体」を失い、死すべき定めの人間へと戻ってしまったのです。
カムランの戦いで負傷し、湖に返還されたエクスカリバー


King Arthur Sir Bedivere throwing Excalibur into the lake by Walter Crane.(1845年)
アーサー王の治世の終わり、息子であり反逆者となったモードレッドとの最終決戦「カムランの戦い」が勃発します。
アーサー王は聖槍ロンゴミニアドでモードレッドを討ち取りますが、鞘を失っていたため自身も頭部に致命傷を負ってしまいます。
死を悟ったアーサー王は、生き残った最後の忠臣ベディヴィエールに 「私の代わりに、このエクスカリバーを湖に投げ返してきてくれ」と命じます。
ベディヴィエールは剣の美しさに目がくらんで二度も王に嘘をついて剣を隠しますが、王の強い意志に諭されて三度目にようやく湖へ全力で投げ込みました。
すると、湖から再び「湖の乙女」の腕が現れて空中で剣を見事にキャッチします。
腕は剣を三度振りかざすと、静かに水底へと消えていきました。



王の死と共に、王を守り続けた聖剣もまた本来の持ち主である異界へと帰っていったのです
エクスカリバー/カリバーンが現代作品に与える影響


エクスカリバー/カリバーンは「聖剣のスタンダード」として現代作品に大きな影響を与え続けています。



日本の若い世代にとって、エクスカリバーのイメージを決定づけたのは間違いなく『Fate/stay night』をはじめとするFateシリーズです
多くの作品では2本の聖剣は同一視されていますが、『Fate』シリーズでは「約束された勝利の剣(エクスカリバー)」と「勝利すべき黄金の剣(カリバーン)」として明確に別宝具として扱われています。
「聖剣エクスカリバー=光のビームを放つ大量破壊兵器」というイメージをつけたのも『Fate』シリーズです。
原典にビームの記述はありませんが、「30本の松明(たいまつ)のような輝きで敵を圧倒した」という記述が現代的に「光の放出=ビーム」と解釈・派手化された好例です。
また、鞘である「全て遠き理想郷(アヴァロン)」の重要性も、神話の設定(持ち主を癒やす)を忠実かつ強力にアレンジされています。
ほかにも「石に刺さった剣」のビジュアルは、勇者の旅立ちの象徴として『ゼルダの伝説(マスターソード)』など数多くの作品に引用されています。



逆に『ファイナルファンタジー』シリーズでは、「エクスカリパー(Excalipoor)」という名前だけ似ている激弱の剣が登場しますが、これは「アーサー王が鞘を失くしてただの人になった(弱体化した)」ことをパロディ化しているようです
エクスカリバーは、あらゆる現代RPGにおける「最強の剣」の名前として絶大な影響を与えています。








