
| 名称 | 金の矢・鉛の矢 |
|---|---|
| 神話体系 | ギリシャ神話 |
| 所有者 | エロース |
| 製作者 | ヘパイストス |
| 形状 | 矢 |
| 主な能力 | 金の矢:射たものに恋心を植え付ける 鉛の矢:射たものに嫌悪感を抱かせる |
金の矢・鉛の矢はギリシャ神話に出てくる愛の神エロースの武器です。
まい愛の神エロースは、愛と美の女神アフロディーテと軍神アレスの子供という説が有名ですが、もともとは原初のカオスから生まれたと言われていました
以下で愛の神エロースの武器について詳しく解説していきます。
金の矢・鉛の矢誕生秘話
金の矢・鉛の矢は鍛治の神ヘパイストスによって製作されたと言われています。


もともと原初の神として扱われていた時代にはヘパイストスはいません。


なので、後世の愛と美の女神アフロディーテと軍神アレスの子供説に沿って金の矢・鉛の矢を持つようになったと考えられます。
後世に考えられた系図


ちなみにアフロディーテはヘパイストスの妻で、アレスとは不倫だったと言われています。
金の矢・鉛の矢の能力


金の矢・鉛の矢の能力は相反する能力になっています。
- 金の矢:射たものに恋心を植え付ける
- 鉛の矢:射たものに嫌悪感を抱かせる
エロースによって金の矢で射られたものは激しい恋心によって人格が変わったり、許されざる恋でも燃え上がってしまいます。
逆に鉛の矢に射られると、どんなに好きな相手でも一気に恋心が冷めて嫌悪感まで抱くと言われているんです。
金の矢が出てくる神話は多いですが、鉛の矢が出てくる話はアポロンの悲恋がほぼ唯一の有名なお話です。



金の矢・鉛の矢に関する神話は神々の運命を大きく変えるものが多いんです
神の精神すら操る金の矢・鉛の矢ですが、格付けすると何位にランクインするのでしょうか?
気になる順位はギリシャ神話の最強武器ランキングの記事で発表していますので、合わせてチェックしてみてくださいね。
おすすめ記事
▶︎【TOP10】ギリシャ神話最強武器ランキング!神話とともに紹介


金の矢・鉛の矢の所有者はエロース


Hildegard Lehnert – Lecture to Cupid(1943年)
金の矢・鉛の矢の所有者はエロースです。
原初の神として扱われていたときには青年の姿で、矢は持っていなかったようですが、アフロディーテの息子の扱いになり、姿も子供になって弓矢を持つようになりました。
神々の武器の多くは鍛治の神ヘパイストスが制作しており、時期は不明ですがエロースの弓矢もヘパイストスによって制作されたと言われています。



エロースはローマ神話ではクピードーと呼ばれ、日本でもキューピッドとして有名です
詳しいギリシャ神話の神々の関係性(家系図)や、武器との関連については「【武器で読み解く】ギリシャ神話の家系図!オリュンポス12神と英雄の神器を解説」で解説しています。
おすすめ記事


金の矢・鉛の矢にまつわる神話


Cupid (lithograph after Jeanne-Elisabeth Chaudet)(19世紀初頭)
金の矢・鉛の矢にまつわる神話をまとめました。
タップで飛べます
金の矢に射られて乙女を攫った冥王


Rembrandt – The Rape of Proserpine(1631年)
冥王ハデスはギリシャ神話のオリュンポスの神の中でも女性関係があまり取り沙汰されない珍しいタイプの男神でした。


そんなハデスに目をつけた愛と美のアフロディーテは、息子のエロースに金の矢を射させます。
エロースの金の矢に射られたハデスはたまたま近くの地上で花を摘んでいたコレー(ペルセポネ)を見て激しい恋に落ちました。


衝動に駆られたハデスは大地を割ってコレーの前に現れ、そのまま力ずくで冥界へ連れて帰ってしまったのです。
コレーの母で大地の女神デメテルは悲しみ、コレーを探して放浪したり引きこもってしまったので、大地の作物が枯れ果ててしまいました。
さすがに困った最高神ゼウス(コレーの父親)は、伝令の神ヘルメスを仲裁役として冥界に送ります。
特別な杖ケーリュケイオンによって
冥界と行き来可能


ヘルメスの説得によって一旦、コレーを地上に戻すことにしたハデスですが、帰り際にコレーにザクロを食べさせました。
冥界に連れ去られたあとも丁重に扱われていたコレーは、差し出されたザクロを戸惑うことなく食べた、とも言われています。


その後コレーは無事にデメテルの元に戻り、地上の作物も元に戻ったことでコレーは春を呼ぶ女神ペルセポネとしても知られるようになりました。


The Return of Persephone
しかし冥界の食べ物を口にしたものは冥界に属するというルールがあるので、ザクロを4粒食べたコレーは一年のうち4ヶ月を冥界で、残りの8ヶ月を地上で過ごすことになったのです。



コレーが冥界に行ってしまう4ヶ月はデメテルが悲しみ、大地に作物ができない冬になる、という四季が生まれる原因になったと言われる話です
アポロンとダプネの悲恋


Apollo-daphne-roman-mosaic.
太陽神アポロンは必中の金の矢を持ち、巨人や大蛇も仕留める腕前の持ち主でした。


あるとき、アポロンの弓をいじって遊んでいたエロースに「子供に私の弓が引けるわけがない」とからかうアポロン。
怒ったエロースは金の矢をアポロンに、偶然そばにいた河の神ぺネイオスの娘ダプネに鉛の矢を射ました。
たちまち激しい恋心を抱くアポロンですが、ダプネはそんなアポロンに嫌悪感を抱きます。
アポロンに追いかけられ、悲鳴を上げながら逃げるダプネ。


Apollo chasing Daphne who throws her arms up, in the background at right shows the moment she turns in a laurel, from The Story of Apollo and Daphne(1530年)
ついに追いつかれそうになったそのとき、ダプネは父ぺネイオスに「私の姿をアポロンが追ってこないものにしてください」と願いました。
ぺネイオスは娘の願いを聞き入れ、ダプネは一本の月桂樹へ姿を変えました。
アポロンは嘆き悲しみ、月桂樹の冠を身につけるようになったのです。


うっかり自分に金の矢を当ててしまったエロースと苦難を乗り越えたプシュケ


Cupid and Psyche
とある国に「アフロディーテの生まれ変わり」と言われるほど美しい王女プシュケがいました。
自分よりも尊重されているプシュケに激怒したアフロディーテは、エロースに「プシュケが地上で最も卑しい男と恋に落ちるようにしなさい」と命令。
エロースはプシュケに金の矢を射ろうと寝室に侵入しますが、プシュケの美しい寝顔に驚いて間違って自分の指に金の矢を刺してしまいました。
激しい恋心を抱いてしまったエロースはプシュケをさらって、夜の暗闇の中でだけ逢瀬を重ねます。


Plate 6- Zephyr carrying Psyche to an enchanted palace, from the Story of Cupid and Psyche as told by Apuleius(1530年)
しかし相手の顔が見たくなってしまったプシュケは、こっそりエロースが眠っているときにろうそくで照らして姿を見てしまいました。
正体がバレたエロースはプシュケの元を去ってしまいます。
しかしプシュケはエロースに会いたい一心でアフロディーテの元に向かい、出された試練を必死に乗り越えてついに身分を超えて結ばれました。



プシュケは神酒ネクタルを飲んで神になったと言われています
英雄を助けるために金の矢に射られた魔女


Charles André van Loo – Jason and Medea(1759年)
英雄イアソンは王位をかけてコルキスの「黄金の羊毛」を手にいれるたびに出ることになりました。
イアソンの旅にはヘラクレスやテセウスなど名だたる英雄が50人も参加しましたが、コルキス王はイアソンが一人で試練を乗り越えるように要求。
イアソンを助けたいヘラ(ゼウスの正妻)とアテナ(知恵と戦いの女神)はアフロディーテに協力を頼みます。
アフロディーテはエロースに金の矢でコルキス王の娘で魔女のメデイアを射抜くように命令しました。
エロースはイアソンと出会った瞬間にメデイアを金の矢で射抜き、メデイアはイアソンに恋をして試練の助けをしました。



イアソンに狂気的なまでに恋をしたメデイアはその後、父を裏切って国宝の「黄金の羊毛」を盗む手伝いまでしますが、最後はイアソンに裏切られて捨てられてしまいます
トロイア戦争の引き金になった駆け落ちをさせてしまう


El juicio de Paris.(1781年)
トロイア戦争の発端となったトロイアの王子パリスとスパルタの王妃ヘレネの駆け落ちにもエロースの金の矢が使われました。
パリスの審判でアフロディーテを選んだパリスは世界一の美女ヘレネとの恋を許されます。
「パリスの審判」とは
海の女神テティスと人間のペーレウスの結婚式には神々がたくさん招かれていましたが、不和の女神エリスだけが呼ばれていませんでした。
怒ったエリスは宴の会場に「最も美しい女神へ」と書いた黄金のリンゴを一つ投げ入れます。


このリンゴを求めて3人の女神が立候補しますが、誰を選んでも揉めるので選ぶ権利をパリスに委ねました。
そこで3人は、パリスにそれぞれ自分を選んだら褒美を出すと言います。
- ゼウスの正妻ヘラ:世界の覇権
- 知恵と戦いの女神アテナ:全ての戦いで勝つ
- 愛と美の女神アフロディーテ:世界一の美女
パリスはアフロディーテを選び、黄金のリンゴを渡しました。
しかしヘレネはすでにスパルタ王と結婚していたので、パリスと恋に落ちさせるためにエロースに金の矢で射るように命じます。
その結果、ヘレネはスパルタ王を裏切ってパリスとともにスパルタに駆け落ち。
怒ったスパルタ王はヘレネ奪還のためにギリシャ連合軍でトロイアに攻め入り、トロイア戦争が勃発しました。



実はトロイア戦争は増えすぎた人間を減らすためのゼウスの策略と言われており、人間同士の戦争ですが神々も多く参戦したのです
金の矢・鉛の矢が現代作品に与える影響


金の矢・鉛の矢が現代作品に与える影響はキューピッドが一番有名です。
エロースの金の矢は、現代作品ではよくキューピッドの矢として「恋に落ちる魔法」のように表現されます。


物理的な矢だけでなく、惚れ薬や魔法の元祖として影響を与えています。
フィクション作品に出るモチーフ例
- ハリーポッターの惚れ薬アモルテンシア
- 夏の夜の夢の恋の汁
- ゲームのスキル「チャーム」



突然の燃え上がるような衝動的な恋心を描くためによく使用されていますね
おすすめ記事
▶︎【TOP10】ギリシャ神話最強武器ランキング!神話とともに紹介


▶︎【武器で読み解く】ギリシャ神話の家系図!オリュンポス12神と英雄の神器を解説








