
| 名称 | 天舟マアンナ |
|---|---|
| 神話体系 | メソポタミア神話(シュメール神話『イナンナとエンキ』) |
| 所有者 | 女神イシュタル(イナンナ) 天空神アヌ など |
| 製作者 | なし |
| 形状 | 空(または水上)を高速で駆ける神聖な巨大船 |
| 主な能力 | 神の領域を超える超高速移動(飛行) 100以上の世界のシステム(メー)を積み込める無限の積載量 |
メソポタミア神話における、愛と美の女神イシュタルの空飛ぶ船が天舟マアンナです。
天舟マアンナは、イシュタルが知恵の神エア(エンキ)を宴会で泥酔させ、世界のシステムである100種類以上の「メー(神の権能)」をすべてひったくって逃走した、神話史上最大の窃盗事件で活躍したことで知られます。
まい迫り来るエア神の追手から逃れるためにイシュタルが乗り込み、猛スピードで世界を駆け抜けた伝説の逃走用ビークル(乗り物)です
ファンタジーRPGの「飛空艇」のルーツとも言えるこの神聖な船の正体と、神々が繰り広げた「大カーチェイス」の激アツな結末に迫ります。
天舟マアンナ誕生秘話


天舟マアンナには人間の船のような「誰が造った」という建造記録(製作者)が存在しません。



シュメール語で「マ(Ma)」は【船】、「アンナ(an-na)」は【天(または天空神アヌ)の】を意味し、直訳すると「天空神アヌの船」になります
つまり天舟マアンナは神々の最長老である天空神アヌの領域に属する、最初から天界に備わっていた「神造の乗り物(概念)」でした。
古代メソポタミアでは、チグリス川・ユーフラテス川という二つの大河を移動するために「船」が最も重要な交通手段でした。
そのため、人間だけでなく神々もそれぞれ「自分専用の豪華な神聖船」を所有していたと考えられています。
中でもこの「天舟マアンナ」は、最高神である天空神アヌや、天の女王たるイシュタルが所有する「空をも飛ぶ(あるいは水上を神速で駆ける)特別な船」でした。



現代の感覚で言えば、大統領や大富豪が乗る「超高性能なプライベートジェット」のようなものですね
天舟マアンナの能力


天舟マアンナはただの交通手段ではなく、神話の逃走劇を成り立たせた驚異的なスペックを持っています。



イシュタルは、知恵の神エア(エンキ)の住むエリドゥの街へ出向く際、わざわざこの天舟マアンナで宴会へと向かったのです
なんだか最初から100以上もある「メー」を乗せて運び出す気満々に感じますね
100以上の概念を積む「無限の積載量」
天舟マアンナは、100以上の概念を積む「無限の積載量」を誇ります。
イシュタルがエア神から奪った「メー」は、王権から木工技術、大洪水まで、100種類以上に及ぶ「世界のシステム(概念)」です。
イシュタルは知恵の神エア(エンキ)を酔いつぶし、マアンナにこれほどの膨大で重い神のデータを一気に積み込んで高速ダッシュで逃げたのです。



イシュタルがそこまでして欲しがった「メー」については以下の記事で詳しくまとめています
▶︎【メー(神の権能)】メソポタミア神話イシュタルが奪った神の権能


追手を振り切る「超高速移動(飛行)」
天舟マアンナは、深淵の神であるエア神が放った刺客(水界の怪物たち)の猛追を振り切るほどの、驚異的なスピードを出せます。
神話の記述では水上を進んでいたとも、天を飛んでいたとも解釈されており、まさに「飛空艇」や「ホバークラフト」のような神のオーバーテクノロジーの結晶でした。



神話の中で神の船が空を航行するという発想は非常に古く、天舟マアンナは人類史上でも最古級の「空飛ぶ乗り物」の神話例の一つとされています
メソポタミア神話の高級飛行船は格付けすると何位にランクインするのでしょうか?
気になる順位はメソポタミア神話の最強武器ランキングの記事で発表していますので、合わせてチェックしてみてくださいね。
おすすめ記事
▶︎【TOP10】メソポタミア神話最強武器ランキング!天命の粘土板から乖離剣エアまで


天舟マアンナの所有者は主にイシュタル


British Museum Queen of the Night.
天舟マアンナは、主に女神イシュタル(イナンナ)が使用する神聖な船として神話に登場します。



実は所有権に注目すると、メソポタミア神話の力関係が透けて見える非常に面白い構図がわかります
本来の所有者(名義人):天空神アヌ


シュメール語で「マ(Ma)」は船、「アンナ(an-na)」は天、あるいは天空神アヌを意味します。
つまり天舟マアンナの本来の所有者は、神々の最長老にして最高権力者である天空神アヌでした。



天空神アヌは、メソポタミア神話の創造神でもあり、最高神である存在です
天舟マアンナは現代で言えば、国家元首クラスだけが乗ることを許された「天界の公式プライベートジェット」や「親(大富豪)の名義になっている最高級スーパーカー」といった位置づけになります。
実質的な所有者(勝手に乗り回す者):女神イシュタル


British Museum Queen of the Night.
神話の物語の中でこの天舟マアンナを実際に乗り回し、大活躍(大暴れ)させているのは、アヌの娘である「天の女王」女神イシュタル(イナンナ)です。



天舟マアンナは、イシュタルの「天の女王」としての圧倒的な特権階級と、破天荒な性格を象徴する最高のビークル(乗り物)でした
実はイシュタルは英雄王ギルガメシュに惚れ込みますがフラれてしまい、腹いせとして天界の戦略兵器の天の牡牛グガランナを送りこむ気性の激しめな女神です。
詳しくはこちら
▶︎【天の牡牛(グガランナ)】メソポタミア神話の最凶神獣!ギルガメシュとエンキドゥが挑んだ厄災


天舟マアンナにまつわる神話


タップで飛べます
神々の大カーチェイス
イシュタルに宴会で酔いつぶされ、つい「メーを全部あげる」と言ってしまったエア神。
目を覚ますと、全財産(メー)が消えてなくなっていました。
焦ってエア神は自身の配下である「深淵の怪物たち(水魔や巨人)」を呼び出し、イシュタルが乗って逃走している天舟マアンナを追撃させました。



マアンナがウルクの街に到着するまでの間、実に「7つの中継地点(停泊所)」において、追手たちによる激しい妨害工作が行われます
次々と襲い来る水界の怪物たちに、イシュタルは大ピンチに陥ります。
しかし、ここで大活躍したのがイシュタルと一緒にマアンナに乗り込んでいた彼女の右腕(側近)である女神ニンシュブルです。
ニンシュブルは呪術的守護者であり、神の使者として巧みに交渉や神力を使って追手を退けました。



イシュタルがそこまでして欲しがった「メー」については以下の記事で詳しくまとめています
▶︎【メー(神の権能)】メソポタミア神話イシュタルが奪った神の権能


ウルクへの凱旋(逃げ切り成功)


ニンシュブルの鉄壁の護衛のおかげで、天舟マアンナは怪物たちの追撃をすべて振り切り、ついにイシュタルの本拠地であるウルクの街へと逃げ切ることに成功します。
そして、マアンナから降ろされた100以上の「メー(文明のデータ)」は、ウルクの街に無事にインストールされました。
こうしてウルクは世界で最も発展した大都市へと成長し、後にあの英雄王ギルガメシュが統治する黄金時代へと繋がっていくのです。
この神話は、文明の中心がエリドゥからウルクへ移ったという歴史的変化を象徴する物語とも考えられています。



英雄王ギルガメシュにイシュタルが惚れ込み、フラれ、腹いせに天界の戦略兵器の天の牡牛グガランナを送りこむ話については以下の記事でまとめています。
詳しくはこちら
▶︎【天の牡牛(グガランナ)】メソポタミア神話の最凶神獣!ギルガメシュとエンキドゥが挑んだ厄災


天舟マアンナが現代作品に与える影響


天舟マアンナは、現代のファンタジー作品における神の乗り物・空飛ぶ船の原型の一つとして影響を与えています。
天舟マアンナが現代作品に与える影響
神の空飛ぶ船というモチーフ


天舟マアンナは、神の空飛ぶ船というモチーフの元祖の一つです。
空を飛ぶ船という発想は、後の神話やファンタジーにも強く影響しました。
- 日本神話の天孫降臨の岩舟
- 北欧神話の太陽神ソールのスヴァリン付きの空飛ぶ馬車
- インド神話の空飛ぶ宮殿「プシュパカ・ヴィマナ」



神が天空を移動するための船というイメージは、古代メソポタミアの時点ですでに存在していたのです
ファンタジーRPGの「飛空艇」のルーツ


天舟マアンナは、ファンタジーRPGの「飛空艇」のルーツの一つでもあります。
『ファイナルファンタジー』シリーズに代表される、ファンタジーRPGの後半で手に入る「空を飛ぶ船(飛空艇)」。
陸や海を越えて世界を自由に行き来するロマンあふれる乗り物の概念は、この「天舟マアンナ」や、北欧神話の空飛ぶ船「スキーズブラズニル」などが強烈な原型(アーキタイプ)となっています。



「スキーズブラズニル」は使わない時には折り畳んでポケットにも入れられるという魔法の船です
詳しくはコチラ


「ケイパーもの(強盗逃走劇)」の最も古い物語


天舟マアンナは「ケイパーもの(強盗逃走劇)」の最も古い物語とも考えられています。
「お宝を鮮やかな手口で奪い取り、相棒と協力しながら高速の乗り物で追手から逃げ切る」という、現代の映画(『ルパン三世』や『ワイルド・スピード』など)で大人気の「ケイパー(泥棒)ジャンル」。
イシュタルとニンシュブルがマアンナに乗って繰り広げたこの痛快な物語は、まさに人類最古の「バディもの強盗アクション」と言っても過言ではありません。



天舟マアンナは、ただの逃走用ボートではなく「人類の文明の歴史を前進させた、最も偉大な運び屋」でもあったのです
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