
| 名称 | メー(Me / シュメール語) ※アッカド語では近い概念として「パルツ(Parṣu)」が用いられる |
|---|---|
| 神話体系 | メソポタミア神話(シュメール・バビロニア) |
| 所有者 | 本来の管理者:知恵の神エア(エンキ) 奪取者:イシュタル(イナンナ) |
| 製作者 | なし (神の権能) |
| 形状 | 明確な形はない (王冠や杖などのアイテムに宿る) |
| 主な能力 | 文明や自然現象の「概念」そのものを支配・発動する |
メソポタミア神話において、神々が世界を管理し、人間社会(文明)を成り立たせるために必要不可欠だった究極のアイテムが「メー(Me)」です。
まいメーは神々の権能(概念)そのものでした
Google検索などではよく「7つのメー」と調べられますが、実はメーは7つだけではありません。
「王権」や「平和」といった立派なものから、「大洪水」や「恐怖」といったネガティブなものまで、100種類以上も存在する「世界の設計図(データ)」なのです。
神々ですら喉から手が出るほど欲しがったこの「メー」とは一体何なのか?
そして、愛と戦いの女神イシュタル(イナンナ)が引き起こした、神話史上最も破天荒な「メーの泥酔強奪事件」の全貌に迫ります。
メー(神の権能)誕生秘話


「メー(Me)」とは、メソポタミア神話において神々が世界を運営するために定めた“神的原理・権能”を指します。



特定の誰かが作ったものではなく、神々が持つ「人間文明のあらゆる要素そのものを構成する宇宙的プログラム」だったのです
シュメール神話では、世界が成立した当初、文明・社会・文化・王権・技術・感情など、あらゆる存在の仕組みは自然発生したものではなく、「メー」によって成立していると考えられていました。
メーに記録されている概念の例
- 政治・社会:王権、統治、玉座、真実、平和
- 技術・文化:木工技術、金属加工、書記の術、音楽、売春
- 感情・現象:恐怖、争い、喜び、勝利、大洪水



粘土板の欠損により全ては判明していませんが、原典には約100〜110個ほどのメーがリストアップされています
これらのデータ(メー)を、神々が「王冠」や「杖」といった神具に宿らせ(現代的に言えば“データをインストールする”ように)身につけることで、初めてその権能を発揮できるというシステムだったのです。
メー(神の権能)の能力


メーの能力は「武器のような攻撃力」ではなく、世界を成立させる機能そのものです。



「勝利」「音楽」「愛と性愛」「悲しみや争い」など、メー1つにつき世界の一要素が対応します
重要なのはメーは善悪を区別しない点であり、幸福も混乱も同じく文明の構成要素でしかなく、メーは「人間社会のすべて」を内包していました。
検索予測の「7つのメー」の正体と誤解


よく「7つのメー」という言葉で検索されることがありますが、メー自体は100種類以上存在します。
では、なぜ「7つ」だと誤解されているのでしょうか?
実は、女神イシュタル(イナンナ)が冥界へ下る際に身につけていた「7つの極大装備」と混同されているからです。
イシュタルの7つの装備
- 偉大なる王冠(シュグル)
- ラピスラズリの耳飾り
- 二連のビーズの首飾り
- 胸の装飾品(トグルピン)
- 黄金の腕輪(指輪)
- ラピスラズリの測量尺と縄
- 高貴な王衣(パラの衣)
イシュタルは冥界を乗っ取るため、自身が支配する数多くのメーの中でも、とくに王権や神威を象徴する権能を「王冠」や「首飾り」などの装備として可視化し、完全武装で冥界へと向かったと考えられています。
つまり、「7つのメー」とは全種類のことではなく、「イシュタルが冥界下りのために厳選した7つの神聖なアイテム」を指す言葉なのです。



イシュタルが冥界で「7つの装備」を剥ぎ取られていく衝撃の神話は以下の記事で詳しくまとめています
▶︎【イシュタルの7つの装備】メソポタミアの女神が「冥界下り」で奪われた神の装飾品





メソポタミア神話の究極アイテムは格付けすると何位にランクインするのでしょうか?
気になる順位はメソポタミア神話の最強武器ランキングの記事で発表していますので、合わせてチェックしてみてくださいね。
おすすめ記事
▶︎【TOP10】メソポタミア神話最強武器ランキング!天命の粘土板から乖離剣エアまで


メー(神の権能)の所有者


メーの所有権は神話の中で変遷します。
本来の管理者:知恵の神エア(エンキ)


Copia de Enki.
メーの本来の管理者は、知恵の神エア(エンキ)です。
エア神の最大の武器は、その圧倒的な知能です。
最高神エンリルが「人間を滅ぼそう」と大洪水を起こした際、エア神は正面から戦うのではなく、一人の人間にこっそりと舟を作らせて種を存続させるなど、知恵を使って神々の決定すら覆しました。



「力づくで解決する」のではなく「理(ことわり)を操作して解決する」点が、魔法使いや賢者の元祖と言えます
神話においてエアは武器ではなく神格そのものですが、現代創作では「世界の秩序を確立した権能」そのものが剣として具現化されており、乖離剣エアの元ネタとして有名です。
詳しくはこちら


奪取者:イシュタル(イナンナ)


British Museum Queen of the Night.
エア神からメーを奪ったのは、愛と戦争の女神イシュタル(シュメール名:イナンナ)です。
イシュタルはメソポタミア神話の中でも特異な神で、相反する属性を併せ持つ存在でした。
イシュタルが象徴するもの
- 愛の女神
- 戦争神
- 王権授与者
- 天界の反逆者
イシュタルは英雄王ギルガメシュに惚れ込みますがフラれてしまい、腹いせとして天界の戦略兵器の天の牡牛グガランナを送りこむ気性の激しめな女神です。



神話においてメーとは、文明の主導権そのものであり、イシュタルがそれを獲得したことで、彼女は「天の女王」としての地位を確立した重要概念だったのです
詳しくはこちら
▶︎【天の牡牛(グガランナ)】メソポタミア神話の最凶神獣!ギルガメシュとエンキドゥが挑んだ厄災


メー(神の権能)にまつわる神話


メー(神の権能)にまつわる神話をまとめました。
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イシュタルによるメーの泥酔強奪事件


世界のすべてのメー(100以上)は本来、深淵と知恵の神エア(エンキ)が住むエリドゥという街の神殿で厳重に管理されていました。
イシュタルは自分の治めるウルクの街を大発展させるため、この「メー(文明のデータ)」を喉から手が出るほど欲しがります。
そこでイシュタルはエア神の神殿へ遊びに行き、美しいイシュタルの訪問に大喜びしたエア神は盛大な宴会を開きました。
宴会でイシュタルはエア神にどんどんお酒を飲ませます。
すっかり泥酔して気分が良くなったエア神は、「イシュタルちゃん可愛いね!私の持ってる『メー』、全部君にあげちゃうよ!」と、王権から木工技術まで、100以上のメーをすべて彼女にプレゼントすると宣言してしまいました。
「言いましたね!」と、イシュタルはエア神が酔い潰れている隙に大急ぎで100以上の「メー」を自身の空飛ぶ船(天舟マアンナ)に積み込み、猛スピードで自分の街ウルクへと逃走したのです。
翌朝、目を覚ましたエア神は世界のシステムであるメーが一つ残らず無くなっていることに気づきます。
青ざめたエア神は急いで配下の怪物たちを呼び出し、イシュタルを乗せて空を飛ぶ「天舟マアンナ」を撃墜してメーを取り戻すよう命令を下しました。
こうして、メソポタミア神話最大の「神々の大カーチェイス」が幕を開けるのです。



この神話は、「文明の中心がエリドゥからウルクへ移った」という歴史的記憶の神話化とも考えられています。
イシュタルの冥界下り


メソポタミア神話で有名な「イシュタルの冥界下り」にも登場します。
ギルガメシュたちに殺された「義理の兄(天の牡牛グガランナ)のお葬式に参列するため」に冥界へと向かったイシュタル(※諸説あり)。
ですが、イシュタルの本音は「姉のエレシュキガルから、冥界の支配権も奪い取ってやる」という野心に満ちていたとされています。
そのため彼女は、自身の「天の女王」としての権力と美しさを最大限に誇示し、冥界の者たちを威圧するために、自身が持つ最高の7つのアーティファクトにメーをインストールし、完全武装で冥界へと乗り込みました。
しかし冥界ではメーは通用しません。
エレシュキガルに繋がる道にある7つの門で装備=メーを剥奪されることで、イシュタルは無力化されてしまいます。
最終的に、エレシュキガルの冷酷な「死の眼差し」によってイシュタルは死体へと変えられてしまったのでした。
この神話は死の前では神すら無力というメソポタミア的死生観を示しています。



詳しいイシュタルの冥界下りについては以下の記事でまとめています
▶︎【イシュタルの7つの装備】メソポタミアの女神が「冥界下り」で奪われた神の装飾品


メー(神の権能)が現代作品に与える影響


メー(神の権能)は、現代ファンタジーにおける概念武装の原型と考えられます。
メー(神の権能)が現代作品に与える影響
「概念・法則」を操る魔法システムの原点


メーは、「概念・法則」を操る魔法システムの最古の原点の一つと言えます。
現代のファンタジー作品(『Fate』シリーズの「概念武装」など)において、火や水といった物理的な魔法だけでなく、「死」や「必中」といった『概念そのものを武器にする』という設定はとても人気があります。
この「世界のルールを切り取って行使する」というシステムは、まさにメソポタミアの「メー」という概念が世界最古のルーツと言えるでしょう。



「装備がキャラ性能そのもの」という概念は、すでに紀元前の神話で完成していたのは驚きですね
RPGの「スキルディスク」や「マテリア」


メーは、ゲームの「スキルディスク」の元祖モチーフともいえます。
特定のアイテムに能力(データ)が封じ込められており、それを装備することで初めて力を使えるようになるという概念。
- 『ファイナルファンタジーVII』の「マテリア」
- ゲームの「スキルブック・技マシン」
このようなシステムも、100種類以上の文明データを付け替えて管理していた「メー」の発想と完全に一致しています。



メーとは「神が世界を操作するための管理権限」とも言える存在であり、メソポタミア神話における最重要概念の一つです
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