【スヴァリン】北欧神話ソールの武器

【スヴァリン】北欧神話ソールの武器
スヴァリンをつけた太陽馬車を引くソール
名称スヴァリン
神話体系北欧神話
所有者ソール
製作者不明
形状太陽の熱を遮熱する巨大な盾
主な能力太陽の熱から太陽馬車や大地を守る
スヴァリンデータベース

スヴァリンは北欧神話に出てくる太陽の女神ソールの防具です。

まい

北欧神話においては、空に輝く「太陽」すら地上を焼き尽くす恐怖の対象となり得ます

そんな灼熱の太陽から大地と海を守り続けている伝説の盾スヴァリン

古ノルド語で「冷やすもの」を意味するスヴァリンは、太陽の馬車の最前線に設置され、世界が燃え尽きるのを防いでいます。

スヴァリンは戦いの道具ではなく、世界の環境維持装置として働く北欧神話の隠れた守護神です。

以下でスヴァリンについて詳しく解説していきます。

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スヴァリン誕生秘話

Odin and his brothers create the world.
画像出典:Wikimedia commons
Odin and his brothers create the world.

スヴァリンの正確な製作者は、神話の原典(『古エッダ』)には記されていません

有名なミョルニルグングニルのように「ドワーフが作った」という記述はなく、スヴァリンの起源は謎に包まれています。

しかし、作られた時期は「天地創造の時代」まで遡ると考えられます。

神々がムスペルヘイムの火花から「太陽」を作って空に配置した際、その灼熱から大地を守るために最初からセットで用意されたはずだからです。

このことから、スヴァリンはトールのハンマーなどよりも遥かに古くから存在する神話最古の防具の一つと言えるでしょう。

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スヴァリンは世界の始まりから存在していたと考えられます

スヴァリンの能力

The Chariot of the Sun by Collingwood.(1908年)
画像出典:Wikimedia commons
The Chariot of the Sun by Collingwood.(1908年)

スヴァリンには太陽の熱から太陽馬車や大地を守る能力があります。

スヴァリン(Svalinn)は「Svala(冷やす)」という言葉に由来し、「冷やすもの(The Cooling One)」を意味します。

北欧神話では、太陽(ソール)はムスペルヘイム(炎の国)の火花から生まれたため、凄まじい熱を発しています。

もし太陽馬車がそのまま空を走れば、太陽の灼熱で海は沸騰し、大地は燃え上がり、馬車を引く馬たち(アルヴァクとアルスヴィズ)さえも焼け死んでしまいます。

そこで、太陽の直前に「スヴァリン」が設置されました。

スヴァリンが強烈すぎる熱を遮断(あるいは冷却)することで、地上には「適度な光と暖かさ」だけが届くようになっているのです。

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スヴァリンは太陽馬車に設置されており、もし外れれば世界は瞬く間に炎に包まれ「ラグナロク(終末)」のような状態になると言われています

スヴァリンの所有者はソール

Máni and Sól by Lorenz Frølich.(1895年)
画像出典:Wikimedia commons
Máni and Sól by Lorenz Frølich.(1895年)

スヴァリンを管理し、太陽の馬車を駆る御者は、北欧神話の太陽の女神ソール(Sól)です。

ソールは巨人ムンディルファリの娘であり、月の神マーニ(Máni)の姉です。

神々によって空に上げられ、太陽の運行を任されたソールは毎日太陽を積んだ馬車に乗り、東から西へと空を駆け抜けています。

この馬車の最前部に設置されているのが、冷却盾スヴァリンです。

ソールはラグナロクまで狼と追いかけっこをしている

The Wolves Pursuing Sol and Mani.(1909年)
画像出典:Wikimedia commons
The Wolves Pursuing Sol and Mani.(1909年)

ソールが毎日猛スピードで空を走っているのには理由があります。

実はソールの背後には魔狼スコル(Sköll)が迫っており、太陽を飲み込もうと常に追いかけ回しているからです。

もしソールが少しでもスピードを緩めれば太陽は狼に食われ、世界は闇に閉ざされてしまいます。

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スコルが太陽を、ハティが月を飲み込み、世界が闇に包まれるとラグナロクが起こると言われています

ソールは「世界を守る盾(スヴァリン)」で熱を防ぎつつ、「世界を滅ぼす狼」から逃げ続けるという、極限の任務を背負っているのです。

ソールの馬車の動力(アルヴァクとアルスヴィズ)

The Chariot of the Sun by Collingwood.(1908年)
画像出典:Wikimedia commons
The Chariot of the Sun by Collingwood.(1908年)

ソールが乗る太陽馬車を引いているのは、2頭の神馬です。

  • アルヴァク(Arvakr): 「早起き」の意
  • アルスヴィズ(Alsviðr): 「極めて速い」の意

スヴァリンの最も重要な役割は、「太陽の直近にいる、この2頭の馬を守ること」です。

もしスヴァリンがなければ、2頭の神馬は自身の引く太陽の熱で瞬時に焼き殺されてしまうと言われています。

スヴァリンにまつわる神話

スヴァリンイメージ

スヴァリンについては、『古エッダ』の「グリームニルの言葉」の中で語られています。

スヴァリンという名の盾が立っている、 輝く神(太陽)の前に。 もしその盾が落ちれば、 山も波も燃え尽きると私は知っている」

短い詩ですが、スヴァリンの重要性を十分に物語っています。

魔剣グラム雷槌ミョルニルが「敵を倒す」武器なら、スヴァリンは「世界を生かす」ための防具なのです。

スヴァリンがあるおかげで北欧の世界には四季があり、人々が暮らせる環境が保たれています。

スヴァリンが現代作品に与える影響

現代作品に与える影響

現代のゲームやファンタジー作品でも、スヴァリンの「防御性能」や「冷却属性」が採用されています。

  • 『ファイナルファンタジー』シリーズの「スヴェル」
  • 遊戯王マスターデュエルの「極星宝スヴァリン」

ゲームでスヴァリンは、高い防御力を持つ盾や、氷属性・水属性の耐性を持つ防具として登場することが多いです。

漫画『ONE PIECE』にも、巨兵海賊団のドリーとブロギーの合体技「太陽の盾(スヴァリン)隔(スキールダ)」としても登場します。

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それぞれの腕に装備した盾で相手の攻撃を防御し、力のまま押し返して吹っ飛ばすカウンター攻撃です

参考文献

  • 佐藤俊之(監修), 造事務所(編著), 『伝説の「武器・防具」が良くわかる本』, PHP文庫, 2007年
  • 佐藤俊之とF.E.A.R(著), 『聖剣伝説』, 新紀元社, 1997年
  • 島崎普(著), 『眠れなくなるほど面白い 図解 ギリシャ神話』, 日本文芸社, 2020年
  • 朝里樹(監修), 『大迫力!NEO伝説の武器・刀剣・防具大図鑑』, 株式会社西東社, 2022年
  • 歴史雑学研究倶楽部(編者), 『ヴィジュアル版 世界の神々と神話事典』, ワン・パリッシング, 2023年
  • ミスペディア編集者(著), 『面白いほどよくわかる伝説の武器:武器への理解が深まる独自考察本』, 2023年
  • 金光仁三郎(監修), 『知っておきたい 伝説の武器・防具・刀剣』, 株式会社西東社, 2010年
  • 日下晃(著), 『ギリシャ神話の教科書シリーズ壮大なるギリシャ神話の世界』, 2023年
  • かみゆ歴史編集部(編), 『マンガ 面白いほどよくわかる!ギリシャ神話』, 株式会社西東社, 2019年
  • 日下晃(著), 『北欧神話の武器や道具』, 2023年
  • 『ゼロからわかる北欧神話』, 生活情報ブックス, 2025年
  • 森瀬繚(著), 『いちばん詳しい「北欧神話」がわかる事典』, SBクリエイティブ株式会社, 2014年
  • ミスペディア編集者(著), 『面白いほどよくわかるケルト神話:スラスラ読めて一気にわかる神々の物語』, 2020年
  • 森瀬繚(著), 『いちばん詳しい「ケルト神話」がわかる事典』, SBクリエイティブ株式会社, 2014年
  • 宇城卓秀(編集長)・浅野智明(編集), 『伝説の武器・防具イラスト大辞典』, 株式会社宝島社, 2011年

この記事を書いた人

子供の頃から神話が大好きな主婦です。子供が神話に興味を持ち始めたので、備忘録がてら、いっそ神話武器辞典を作ろう!とサイトを立ち上げました。

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