
| 名称 | 八咫鏡(ヤタノカガミ) 真経津鏡(まふつのかみ) |
|---|---|
| 神話体系 | 日本神話(記紀神話) |
| 所有者 | アマテラス → 歴代天皇 → 伊勢神宮 |
| 製作者 | イシコリドメ(石凝姥命) |
| 形状 | 「八咫(大きな円周)」を持つ巨大な鏡 |
| 主な能力 | 真実を映す 魔を跳ね返す 太陽神(アマテラス)の分身 |
八咫鏡(ヤタノカガミ)は日本神話に出てくるアマテラスのアイテムです。
まい八咫鏡(やたのかがみ)は、日本神話に登場する「三種の神器」の中で、最も神聖で尊いとされる宝物です
八咫鏡(ヤタノカガミ)は、草薙の剣(武力)、八尺瓊勾玉(王位)と並ぶ神器ですが、この鏡だけは別格の扱いを受けています。
なぜなら、八咫鏡(ヤタノカガミ)は最高神アマテラスが「この鏡を私だと思って祀りなさい」と言い残した、神の魂そのものだからです。
岩戸隠れの闇を払い、世界に光を取り戻すきっかけとなった「真実の鏡」。
現代のゲーム作品では、あらゆる攻撃や魔法を跳ね返す「聖なる盾」として描かれることも多い、八咫鏡(ヤタノカガミ)について解説します。
八咫鏡(ヤタノカガミ)誕生秘話


Origin of the Cave Door Dance (Amaterasu) by Shunsai Toshimasa 1889.(1889年)
八咫鏡(ヤタノカガミ)が作られたのは、日本神話最大のピンチである「天岩戸(あまのいわと)隠れ」の時です。
アマテラスの興味を引いて外に出すための道具として鏡を作ったのが、イシコリドメ(石凝姥命)という鍛冶の神(老婆の姿とされる)でした。
前身で失敗作と言われる二枚の鏡
実はイシコリドメ(石凝姥命)が最初に作った鏡は少し傷(あるいは不備)があったため、採用されませんでした。
最初に作った鏡
- 「日像鏡(ひがたのかがみ)」
- 「日矛鏡(ひぼこのかがみ)」
現在まで日像鏡と日矛鏡は、アマテラスの前霊(さきみたま)として日像鏡は日前神宮、日矛鏡は國懸神宮の御神体として祀られています。



ただしこれまでに実物が調査されたことはなく、伝説が本当なのかは謎に包まれています
八咫鏡(ヤタノカガミ)は現在「伊勢神宮」に祀られている


Naiku Ise Shrine 03.(2013年)
八咫鏡(ヤタノカガミ)は現在、三重県にある伊勢神宮の内宮(皇大神宮)に御神体として祀られています。
三種の神器の中でも最上位の扱いであり、絶対に誰も見てはいけないという厳格なタブーがあります。
天皇陛下ですら実物を見ることはなく、幾重にも重なった箱や布に包まれ、厳重に安置されていると言われています。



現在、皇居の「賢所(かしこどころ)」にも八咫鏡がありますが、これは崇神天皇の時代に作られた形代(かたしろ=分身・レプリカ)です
- 伊勢神宮: 本物(オリジナル)
- 皇居: 形代(分身)
神道では形代にも本物と同じ神霊が宿るとされるため、どちらも極めて神聖なものとして扱われています。
八咫鏡(ヤタノカガミ)の能力


Yata no Kagami, artist impression.(2010年)
八咫鏡(ヤタノカガミ)は、単なる鏡以上の霊的なパワーを持っています。
- 太陽神の分身(神の魂)
- 真実を映し出す
- 魔を跳ね返す(反射)
アマテラスは孫のニニギを地上へ送る際に「この鏡を、私を見るのと同じように見て、大切に祀りなさい」と言って八咫鏡(ヤタノカガミ)授けました。
つまり鏡=アマテラス本人と同等の権威があります。
また鏡は光を反射する性質から、邪悪なものを跳ね返す「破邪」の力が強いとされ、後世の創作では「魔法反射」などの能力として表現されます。
「八咫(やた)」の意味と形状
「八咫」とは具体的な8メートルといった意味ではなく、「非常に大きい」「円周が大きい」という意味です。
- 八(や)
日本神話で「たくさん」「聖なる」を表す数。 - 咫(た)
手のひらを広げた長さ(約18cm〜)
つまり「手で抱えるほどの大きさがある立派な鏡」といった意味になります。



神話の中でもアマテラスを映して「自分より尊い神様」と勘違いさせたほどなので、上半身や全身が映るような大きさだったのではないでしょうか
八咫鏡(ヤタノカガミ)は見てはいけない・見れない鏡


八咫鏡には、「人が直接見てはいけない」という強力なタブーの伝説があります。
しかし過去に、伊勢神宮の鏡をこっそり見ようとした天皇や神職の話が伝わっています。



箱を開けた瞬間に白い雲が立ち込めたり、目がくらんだりして、結局誰も直視できなかったと伝承されています
現在でも伊勢神宮の神職であっても、鏡を直接見ることはありません。
式年遷宮(20年に一度のお引越し)の際も夜間に白い布で覆ったまま移動させるため、その姿は完全に秘匿されています。
この「見てはいけない」という神秘性こそが、この神器の最大の能力かもしれません。
八咫鏡(ヤタノカガミ)の所有者はアマテラス


Amaterasu cave wide.(1856年)
八咫鏡(ヤタノカガミ)の主たる所有者(管理者)は、日本神話の最高神天照大御神(アマテラス)です。
アマテラスと八咫鏡(ヤタノカガミ)の関係は、単なる「持ち主と道具」ではありません。
実は、八咫鏡(ヤタノカガミ)はアマテラス自身の「魂」そのものとされています。
八咫鏡(ヤタノカガミ)はアマテラス自身である
アマテラスと八咫鏡の関係で最も重要なのが、孫であるニニギノミコトを地上へ降臨させる際(天孫降臨)の言葉です。
彼女は三種の神器を授けましたが、八咫鏡(ヤタノカガミ)に対してだけは特別な命令を下しました。
「この鏡を、私の御魂(みたま)だと思って、私を拝むのと同じように大切にお祀りしなさい」 (『古事記』より現代語訳)
これを「宝鏡奉斎(ほうきょうほうさい)の神勅」と呼びます。



剣や勾玉はあくまで「権威の象徴」や「護身用」として授けられましたが、鏡だけは「私そのもの(神の分身)」として扱うよう定義したのです
現在アマテラスは伊勢神宮に鎮座している


Naiku Ise Shrine 03.(2013年)
アマテラスの言葉通り、八咫鏡(ヤタノカガミ)は歴代天皇のそばで「アマテラス自身」として大切に祀られました(同床共殿)。
しかし、その霊威(神のパワー)があまりに強すぎたため、第10代崇神天皇の時代に「一緒に暮らすのは恐れ多い」として皇居の外へ移され、最終的に現在の伊勢神宮(内宮)に鎮座することになりました。
今でも伊勢神宮では、八咫鏡(ヤタノカガミ)を「アマテラス大御神の御神体」として最上級の敬意で祀り続けています。
八咫鏡(ヤタノカガミ)にまつわる神話


八咫鏡(ヤタノカガミ)は天界(高天原)で作られ、地上の皇宮を経て、伊勢の地へ鎮座するという長い旅をしてきました。
主要な3つの神話エピソードを紹介します。
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- 八咫鏡(ヤタノカガミ)誕生のきっかけ「天岩戸隠れ」
- 天孫降臨と「宝鏡奉斎の神勅」
- 「同床共殿」から「伊勢神宮創設」へ
八咫鏡(ヤタノカガミ)誕生のきっかけ「天岩戸隠れ」


Origin of the Cave Door Dance (Amaterasu) by Shunsai Toshimasa 1889.(1889年)
神の世界を去る前にアマテラスの国へと訪れたスサノオですが、大暴れをしてついには天の服織女の一人が事故で命を落としてしまいました。
スサノオの乱暴に心を痛めた太陽神アマテラスは、天岩戸という洞窟に引きこもってしまいます。
太陽が隠れたことで世界は完全な闇に包まれ、災厄が蔓延しました。
困り果てた神々は会議を開き、「どうにかしてアマテラス様を外に連れ出そう」と策を練ります。
まず、イシコリドメは天の安河(あめのやすかわ)の川上にある岩や金属を使い、この世で最も美しい鏡を鋳造しました。
そして神々は岩戸の前でどんちゃん騒ぎをし、不思議に思ったアマテラスが「暗闇で大変なはずなのに、なぜ楽しそうなの?」と問いかけます。


Amaterasu appearing from the cave.(1882年)
すると神々は「あなた様より尊い神が現れたので、みんなで喜んでいるのです」と答えました。
アマテラスが「そんな神がいるなら見たい」と隙間から覗き込んだ瞬間、目の前に八咫鏡が差し出されました。
鏡には「輝く自分自身の姿」が映っていましたが、アマテラスはそれが自分だとは気づかず「本当だ、すごい神がいる」と思って身を乗り出しました。
その隙にタヂカラオ(力持ちの神)が彼女を引っ張り出したので、世界は無事に明るさを取り戻したのでした。



この後、元凶となったスサノオは高天原を追い出され、降り立った地上で天羽々斬(アメノハバキリ)によってヤマタノオロチを倒しました
天孫降臨と「宝鏡奉斎の神勅」


Ninigi otokawa.(2018年)
アマテラスが孫のニニギノミコトを地上の支配者として降臨させる「天孫降臨」の際、八咫鏡は草薙の剣(天叢雲剣)・八尺瓊勾玉(三種の神器)と共に授けられました。



アマテラスは乱暴者のスサノオの子孫ではなく、自分の子孫こそ地上の支配者に相応しいと考えて「天孫降臨」に踏み切りました
この時、アマテラスは鏡に対してのみ特別な言葉(神勅)を残しました。
「この鏡を、もっぱら私の御魂(みたま)として、私を拝むのと同じように大切にお祀りしなさい」 (宝鏡奉斎の神勅)
これにより、八咫鏡は単なる道具ではなく「アマテラスの魂そのもの(御神体)」としての地位を確立しました。
ニニギノミコトはこの言いつけを守り、自身の宮殿で鏡を大切に祀りました。
「同床共殿」から「伊勢神宮創設」へ


Emperor Sujin.(1895年)
ニニギノミコトから数えて神武天皇(初代)、そして第10代崇神天皇の時代まで、八咫鏡(ヤタノカガミ)はずっと天皇と同じ屋根の下(宮中)で祀られていました。



これを「同床共殿(どうしょうきょうでん)」と言います
しかし、崇神天皇の時代に疫病などの災いが続きました。
崇神天皇は「神の威光があまりに強すぎて、人間と同じ場所にあることが良くないのではないか(神威を畏れ多いと感じた)」と考え、鏡を皇居の外へ移すことを決意しました。
このとき、鏡が手元からなくなることで守りが手薄になることを防ぐため、「形代(かたしろ)」と呼ばれる分身(新しい鏡)が作られました。


Yata no Kagami, artist impression.(2010年)
そしてオリジナルの八咫鏡(ヤタノカガミ)は皇女であるトヨスキイリヒメに託され、理想の安置場所を探す旅に出ました。
トヨスキイリヒメの後を継いだヤマトヒメ(倭姫命)は、八咫鏡を祀るのにふさわしい清らかな場所を求めて、大和、近江、美濃など各地を巡りました(元伊勢伝説)。


PrincessYamatoHime.(1822年)
そして最後に辿り着いたのが現在の三重県・伊勢の地で、ここでアマテラスの声が聞こえました。
「この地は、波の音が聞こえ、帰る波も寄せる波も美しい、安らげる国だ。私はここにいたい」
こうして伊勢の地に伊勢神宮(内宮)が建てられ、八咫鏡はここの御神体として鎮座することになりました。


皇大神宮奉祀.(1933年)
これ以来2000年近く、八咫鏡は一度も伊勢の地から動くことなく、日本の総氏神として祀られ続けています。
八咫鏡(ヤタノカガミ)が現代作品に与える影響


八咫鏡(ヤタノカガミ)は現代のゲームやアニメでは、鏡そのものとして登場するほか、「光を操る技」や「防御盾」として登場することが多いです。
- 『ONE PIECE』
海軍大将・黄猿(ボルサリーノ)の技「八咫鏡」
光となって壁などで反射しながら移動・攻撃する技 - 『NARUTO -ナルト-』
うちはイタチが須佐能乎(スサノオ)で使う霊器「八咫鏡」
あらゆる属性攻撃を無効化する絶対防御の盾として描かれた - 『シャーマンキング』
麻倉家に関連する神聖な鏡
麻倉葉が使用し、シャーマンファイトで重要な役割を果たした - 『大神(OKAMI)』
主人公アマテラスのメイン武器として「鏡」が登場
攻撃/防御の補助アイテムとして機能し、ストーリーでも重要な役割 - 『真・女神転生シリーズ(SMT)』
三種の神器の一つとして、特定のクエストや装備で登場
悪魔やペルソナに関連するアイテムとして、雷や光属性の効果を持つ場合が多い



八咫鏡は草薙の剣などに比べ、物理的なアイテムとしての登場が少なく、モチーフや間接的な言及が多いです
これは神話での「智慧/真実」の象徴性が抽象的だからと考えられます








